日本マイクロソフトは11月17日、Windows 10 IoTに関する説明会を開き、IoTの進化に向けたMicrosoftの考え方などを紹介した。

MicrosoftのIoTに向けた説明を行った同社 GeneralManager、IoT Device Experience Sales & MarketingのRodney Clark(ロドニー・クラーク)氏

Microsoft Generalmanager、IoT Device Experience Sales & MarketingのRodney Clark(ロドニー・クラーク)氏は冒頭、「IoTの進化はMicrosoftにとって好機となる」ということを強調。特にBtoB領域、いわゆるIndustrial IoT(IIot)での市場創出機会への期待は高く、活用されていないデータをいかに収集、分析し、情報として提供できるようにするかが重要になってくるとした。この流れは日本でも同様で、ICT市場の成長率は2014年から2019年までの5年間のCAGRで-0.1%だが、同様の期間でIoT市場は同12%という市場予測を同氏は掲げ、「IoT市場にはセンサデバイスだけでなく、ゲートウェイや通信ソリューション、データの分析能力なども必要になってくる。日本マイクロソフトとパートナーは、そうした予測されている市場に対して最大限の利益をあげるための取り組みを協力して行っていく」とする。

そうしたIoT分野に対する同社が提供する価値が「BETTER TOGETHER」だ。Windows Embeddedとして長年OSを提供してきたノウハウと、Azure IoT Suiteによるクラウドの俊敏性の組み合わせで、パートナーのビジネスの加速を図っていこうというもので、OSやデバイスの種類を問わずに統一したアプローチを提供していくことが可能になるとしている。すでにデバイスを探すIoTプロジェクトにAzure IoT Suiteのテスト済みで認証を受けたハードウェア、プラットフォーム、サービスの紹介を行うプログラム「Microsoft Azure Certified for IoT」が提供されており、Texas InstrumentsやIntel(Edison)、Freescale Semiconductorといった半導体ベンダのほか、Beaglebone BlackやRaspberry Pi2、MinnowBoard MAXといった開発ボードもリストに記載されている。

BETTER TOGETHERは、WindowsとAzure IoTの提供により、組み込みとクラウドの融合を図り、それを価値として提供しようというものとなる

Windows 10 IoTとして提供されるのはx86プロセッサに対応し、デジタルサイネージやPOS端末、KIOSK端末、ATM、FA機器などをターゲットとした「Windows 10 IoT Enterprise」、ARMプロセッサに対応し、モバイルPOSや小型の業務端末をターゲットとした「Windows 10 IoT Mobile Enterprise」、そしてx86、ARMともに対応し、IoTゲートウェイやスマートホーム/ビル、ヒューマンマシンインタフェース(HMI)といった分野をターゲットとする「Windows 10 IoT Core/Core Pro」の3エディション。ただし、Universal Windows Platform(UWP)として、Windows 10が稼働するどのような機器であっても、デバイスやリソースを活用できるように設計されているため、例えば、1つのUWPアプリを開発するだけで、PCからモバイル、組込機器に至るまで利用が可能となり、ROIの向上を図ることができるようになっている。またドライバも1つのUniversal Windows Driverで、すべての機器に対応可能となるため、周辺機器の接続性に関する敷居を低くすることなども可能となった。

Windows 10 IoTとして提供される3つのエディション。従来のWindows Embeddeも利用する分野ごとにエディションが分かれていたが、EmbeddedではなくIoTへと名称が大きく変更されたことが大きな違いとも言える

Windows 10 IoTについての説明を行うMicrosoft GeneralManager、OEM Technocal Sales - IoTのCarl Coken(カール・コーケン)氏

「あるデバイスを追加した際に、従来のPCやサーバと同様に管理をしたいというニーズがエンドユーザーからよく聞かされるが、こうした課題の解決に向けてOpen Mobile Allianceが策定したOpen Mobile Alliance-Device Management(OMA-DM)を採用しており、一貫性を確保しているほか、AllSeenが推進する通信フレームワーク『AllJoyn』により、プロトコルやエコシステムを越えて、組込機器同士が連携して動作することも可能としている」(Microsoft GeneralManager、OEM Technocal Sales - IoTのCarl Coken氏)とのことで、Windows端末以外の機器とも接続性を確保していることも強調。さらにMicrosoft Azure IoT Suiteに接続することで、クライアントデバイスからAllJoynなどを用いてデータをゲートウェイ経由でIoTハブに送り、そこからさまざまなデータの処理や、実行可能な情報への変換などまで一貫して実現することも可能だとした。

アプリケーションやドライバをユニバーサル化することで、開発負担の軽減などを図ることが可能となる

OMA-DMやAllJoyn、Azure IoT Suiteなどにより、別OSや機器の種類が異なっていても管理や連携が可能となるほか、データ分析といった部分まで一貫して実行することが可能となった

なお日本市場向けては、これまで組込業界に対しては、何らかの機器開発の際に、カスタマにOSの評価を行ってもらう、といった取り組みが主であったが、IoT時代が本格化すれば、どのようなビジネス上の課題の解決に向けたソリューションを構築できるのか、エンドユーザーに向けてどのような価値を提供できるのか、といった話まで行っていく必要があるとのことで、単に製品の提供のみならず、サービス全体の提供に向けた協力関係の構築などが進むことになるであろうとのことで、すでに機器の接続性に向けたパートナーシップやデータ分析に向けたパートナーシップといった分野も含めたパートナーとパートナーのマッチングに向けた手伝いなども進め、パートナー同氏のビジネスの変革に向けた手助けを行っていければ、としている。

Windows 10 IoT対応の開発ボード。左からDragonBoard 410c、Raspberry Pi2、MinnowBoard MAX

一番左が東京エレクトロン デバイス(TED)によるリモートコントロール&IoTゲートウェイ「Falcon Link MkII」で、Windows 10 IoT Coreを搭載し、システムに負荷をかけずに対象機器のコントローラ画面をキャプチャして送信し、遠隔地からの稼働状況確認や操作を可能とするものとのこと。右から2番目はドローンワークスの産業用ドローン。フライトコントローラ部分にWindows 10 IoT Coreを、画像処理や機械学習などを必要する場合にはWindows 10 IoT Enterprise搭載アプリケーションPCを搭載してフライトコントローラと連動させるほか、こうして収集されたデータは、Microsoft Azureと連携してさまざまなクラウドサービスへと展開されていくこととなる。そして一番右がアドバンテックによるIoTゲートウェイを用いた各種デモ。左下がIoTゲートウェイで、左上がランプ調光装置、右下が10.1型の堅牢仕様タブレットコンピュータ、右上がAzureを活用したフリーとマネジメントのデモとなっている

一番左がベッコフオートメーションのWindows 10 IoT Coreに対応予定の組込型コントローラ。その左がNTTデータMSEによるIoTデバイス・プラットフォーム基盤のAllJoynを用いたデモで手前のボードはDragonBoard 401c。さらにその左が岡谷エレクトロニクスの「スナップスキャン IoT for Cloud」開発プラットフォームで、クラウド対応のバーコードスキャンシステムの開発に向けたプラットフォームとなる。そして右がコンテックのFAコンピュータ

一番左がインタフェースのwindows 10 IoT Enterpriseを搭載した官製はがきサイズの電源ブチ切り対応小型コンピュータ。その左がエプソンダイレクトの幅45mmの省スペースPC。さらにその左がNECのWindows 10 IoT Enterprise搭載10.1型業務用タブレットコンピュータ。そして右がHPCシステムズのWindows 10 IoT対応10.1型タブレットコンピュータ