9月上旬は雨ばかりですっかり秋模様の日々が続いていた。だが、いまだに30度近い気温になる地域もあるなど、暑い日が見られる。
暑い時期に起きる健康障害である熱中症を防ぐには、水分補給が大切なのは周知の事実だ。ただ、一日にどれぐらいの水分を、どのタイミングで摂取すればいいのかはあまり知られていない。
「喉が渇いたら水分補給をすればいい」と考えている人もいるかもしれないが、喉が渇いている時点で体内の水分量は相当に失われている。一歩間違えれば脱水症状を引き起こし、熱中症にもつながりかねない。
そのため、医学博士で管理栄養士でもある日本医療栄養センターの井上正子所長は、「一日8回を目安としたこまめな水分補給」を推奨している。毎回の水分補給量はコップ1杯(150mL)。その8回のタイミングを一つひとつ紹介していこう。
■起床時……井上所長は、「人はコップ1、2杯程度の寝汗をかき、起床時はとにかく水分量が少なくなっています」と話す。朝は血液濃度が最も高くなっており、「ドロドロ血液」は熱放出をしづらいため、熱中症になりやすいとも言われている。目覚めの一杯を意識的にとるといいだろう。
■朝食時……食事前に水を飲むと、胃腸が刺激されて消化を助けてくれる効果もある。また、食事で摂取する栄養素の吸収もスムーズにしてくれる。
■午前10時ごろ……朝食と昼食の合間にも水分補給を忘れずに。
■昼食時……食事中に水を飲むことで、食べすぎを抑制するとともに、栄養素の吸収をスムーズに。
■午後3時ごろ……いわゆる「おやつの時間」には、お菓子などにプラスする形で、水分補給を忘れないようにしよう。
■夕食時……飲酒をする場合、飲みすぎ防止や体の負担軽減といったメリットも見込めるため、積極的に水分を補給するようにしよう。「アルコールは利尿効果が高いので、『ビールは水だ』と思って飲む方も多いんですけれど、摂取する以上に水分が出ていってしまいます。アルコールを飲んだ分ぐらいの水は飲んだ方がいいでしょう」。
■入浴前後……入浴で汗をかくため、入浴前後にはきちんと水分を。
■就寝前……睡眠中に失われる水分を補うためにも、就寝前に水を飲むようにしよう。「夜中のトイレが気になる人は、就寝1時間前に水を飲み、就寝直前にトイレに行くとよいでしょう」。
一日8回、すべてのタイミングでコップ1杯分の水を飲んだと仮定すると、その総量は1.2Lとなる。井上所長は、一般的に食事などで体内に入れている一日の水分量(1.3L)から一日に体外へ出している尿や汗などの水分量(2.5L)を引くと、マイナス1.2Lになると話す。すなわち、毎日1.2Lの水分を摂取することで、私たちの水分収支量はプラスマイナスがゼロになるというわけだ。
数字で見ると意外と多くの水分量を摂取しないといけないことがわかる。だが、暑くて汗をかきやすい時期はより多めの水分を補給しておいて間違いはない。
熱中症対策に大切なのは、「喉の渇きを感じる前の水分補給」。こまめに水分を摂(と)ることで、体を目覚めさせたり、消化がよくなったりするメリットもある。熱中症から身を守りつつ、健康的な生活を過ごすためにも、賢く水分を補給するようにしよう。