ソニーモバイルコミュニケーションズとZMPは8月24日、両社が8月3日付で設立した自律型無人航空機(UAV)とクラウドサービスを組み合わせた産業用ソリューションを提供する合弁会社「エアロセンス」の設立および事業開始に関する会見を都内で開催した。
エアロセンスのビジョンは、「私たちは、ソニーモバイルとZMP、それぞれの強みを生かし、自律型無人航空機(UAV)とクラウドサービスを組み合わせた産業用ソリューションの提供を通じて、より効率的なモニタリング・測量・管理・物流等を実現し、環境に配慮して安心して暮らせる社会の構築に貢献していきます」というもの。ZMPの代表取締役社長 兼 CEOで、エアロセンスの代表取締役社長 兼 CEOも兼任する谷口恒氏は、「これまでZMPでは、家庭用ロボットなどで培ってきたノウハウを鉱山・建設機械や物流支援、ロボットタクシーなどへと展開してきたが、これらはすべて陸上のロボット。エアロセンスを通じて、空にフィールドを広げ、陸上ではできなかった新たな価値の提供を目指す」と、新会社の位置づけを説明する。
また、「ソニーでもZMPでもできない新たな挑戦ができる会社にしていきたい」ともしており、その事業領域は「鉱業・土木」「物流・運搬」「農業」「警備・監視」「建築・点検」といったものを想定しているとするが、すでにマンションデベロッパーなどと協議を進めており、そうした建築分野での活用は視野に入っているようだ。
具体的なビジネスとしては、「重視するのは自律であるという点」(エアロセンスの取締役CTOを務める佐部浩太郎氏)というように、フライトパス、離着陸、飛行、そして撮影に至るすべてをUAVが自動で判断し、実行する点を活用し、熟練のオペレータを要せずに、現場はボタン1つ押すだけで、作業が完了することができる、という現場の簡略化によるコスト削減と、操縦ミスによる墜落といったヒューマンエラーをなくすことができるというメリットを最大の武器としていくほか、撮影した映像の活用なども含めたサービス、ネットワーク技術などを生かしたクラウドサービスなども含めたパッケージソリューションとして提供していくことを検討しているとする。
こうしたビジネスに活用される独自のマルチコプター型UAV「AS-MC01-P(試作機)」の仕様はというと、コントロール用プロセッサのほかに、フロントおよび下方のカメラ(ソニー製レンズスタイルカメラ「DSC-QX30」)をリアルタイム処理して、マッピングや自己の位置特定を実現するビジュアルSLAM用プロセッサも別途搭載しながら、機体重量は約3.0kgに抑えている。対角モータ間距離は515mmで、飛行時間は約20分、耐風速は10m/s以上としており、悪天候下での飛行も可能としているほか、「ソニーの高感度イメージセンサを使って環境センシングし、データをリアルタイム処理し、環境を認識することで、GPSを用いないでも、自己の位置の同定を行い、自律飛行が可能なため、従来UAVが飛べなかったところでも活用可能」(佐部氏)とする。
また、同社は、現在、垂直離着陸(VTOL)型UAV「AS-DT01-E(実験機)」の開発も進めていることを明らかにした。同UAVは、三井化学の金属樹脂一体化技術「ポリメタック」を活用することで炭素繊維強化プラスチック(CFRP)とアルミジョイントの一体成形部品を骨格として採用。これにより、バッテリー込みで重量7kg、飛行時間2時間以上で最高飛行速度170km/h、耐風速15m/s以上を実現したとする。
なお、同社としては、当面はマルチコプターを用いたビジネスを推し進めることで、「ざっというと2020年には売上高100億円を超す企業にしていきたい」(谷口氏)としているが、VTOL型は、法規制などの問題はあるとしつつも、実用化されれば、ビジネスとしての期待はマルチコプター型よりも大きいとの見方を示しており、より大きなビジネスチャンスを掴んでいきたいと意欲を示している。
垂直離着陸(VTOL)型UAV実験機「AS-DT01-E」。中下段の機体は、実際に飛行試験を実施した機体。上段はポリメタックを用いて製造された機体で、ボディの素材の違いのほか、フレーム周辺を見ると、ポリメタックの採用によって部品点数が削減されていることなどがわかる |
「AS-DT01-E」の飛行試験の様子。まだ、翼の可変制御は自動ではないが、今後、そうした部分も自動化していくことでの完全自動化も目指したいとのこと |