情報・システム研究機構 国立情報学研究所は8月6日、コンテンツ科学研究系教授の越前功氏らが開発した、カメラなどによる顔認識を不能にして着用者のプライバシーを守る眼鏡型装着具「プライバシーバイザー」が、福井県鯖江市の企業によって商品化されることになったと発表した。

昨今、写真を付加して投稿するソーシャルネットワークの利用が広がっており、本人が意図せず写り込んだ写真から「誰が」「いつ」「どこにいたか」といった個人情報が不特定多数に知られる可能性があり、プライバシーを保護するため、顔認識を防ぐ方法の研究が進められている。

従来の顔認識の防止技術は、顔面に着色したり、顔を物理的に隠したりすることで顔認識の前段となる顔の位置の検出を妨げる方法だったため、通常の対人コミュニケーションに支障を来すという課題があったという。

これに対し、「プライバシーバイザー」では、眼鏡のように着用するために着用者の視覚やコミュニケーションには影響を与えず、顔面に明暗をつくる可視光を反射・吸収する素材をバイザーに貼付することで目の周りの明暗の特徴をなくし、顔検出を妨害するという方法を確立。

加えて、光反射・吸収素材を用いている「プライバシーバイザー」は、電子部品やと区主な材料を必要としないため安価に実装可能。

「めがねのまちさばえ」を掲げる福井県鯖江市のニッセイが、この光を反射・吸収する素材で顔検出を不能にする技術を活用して、プライバシーを守るための眼鏡を商品として量産することが決定した。

従来公開されていた「プライバシーバイザー」の試作品は3Dプリンタを利用した樹脂フレームだったが、同社は量産化にあたって自社の強みであるチタンを使ったフレームを採用。軽くて強度が強いチタンの特性を生かし、通常の眼鏡に比べて湾曲が大きいプライバシーバイザーのフレーム形状に対応した。

左から、3Dプリンタで印刷した樹脂フレームによる「プライバシーバイザー」の試作品、チタンフレームの量産モデルのイメージ(いずれもデザインは安藤毅氏、片方聰氏)

フレームにチタンを採用して量産化することで金型や治具、加工費などのコストが高くなるため、同社は今後、鯖江市が実施・運営しているクラウドファンディング事業「FAAVOさばえ」を活用して製作費の一部を調達する。ちなみに、8月7日時点で、クラウドファンディングの達成度は目標金額の49%となっている。

「プライバシーバイザー」のクラウドファンディングのページ