リアライズ・モバイル・コミュニケーションズ、日立製作所、サイバー創研の3社は6月30日、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)による「クリーンデバイス社会実装推進事業」の委託予定先に採択されたことを受け、「クリーンビーコンを用いたヒューマンナビゲーション社会実装実証事業」に着手すると発表した。
現在、「iBeacon」などBluetooth Low Energy(BLE)による近距離無線技術を用いたビーコン機器を利用し、スマートフォンなどの情報端末にトリガーを与えてクーポン配布や位置情報取得などを行う、各種のサービスが普及している。今後も訪日外国人の急増や防災防犯意識の高まり、地方活性化などの社会的ニーズを満たす技術として、ビーコンを用いたヒューマン・ナビゲーションは、市場の拡大を期待できる。
一方、動作に電源を必要とするビーコン機器を広範囲・大量に設置すると、管理や電池交換などのメンテナンスの問題が発生する。今回の実証事業では、無給電で24時間動作しメンテナンスフリーな「クリーンビーコン」を実現・製品化することで、これらの問題の解決を目指すとしている。
クリーンビーコンは、日立が持つ技術「環境発電エネルギーマネジメント回路」を利用する。これにより、室内照明などの低照度の環境エネルギー下でも短時間での動作開始が可能になるほか、ビーコン機器の動作に必要な電力の蓄電も同時に行うことができるといい、夜間や停電時など環境エネルギーを得られない場合でも一定時間、動作を継続できる。
今回の実証実験では、クリーンビーコンの動作環境・機能・性能などを検証し、実用化に向けた信頼性・安全性の向上を図るという。さらに、クリーンビーコンの設計仕様を公開し、デバイスの標準化・共通化を進めることで、普及拡大を目指す。
クリーンビーコンのイメージ |
将来、各種のビーコン機器を異なるエリアに大量に設置した場合、それらを束ねて統一管理できるプラットフォームは現時点では存在しないため、事業者がサービスを展開するためにはそれぞれ専用のビーコン・インフラを新たに構築する必要が生じ、コスト負担や二重投資が普及拡大の障壁になっているという。
ビーコン機器のマルチベンダー化を図り、広範囲に敷設した多様かつ大量のビーコンを集中管理できるプラットフォームを構築し、サービス事業者へ開放する仕組みを整備することで、複数の事業者が既設のビーコン・インフラを相互利用でき、よりリーズナブルにサービスを展開可能になるという。
さらに、これらの事業者がインフラ提供者に利用料を支払うといった新たな仕組みを構築することで、サービスを展開せず、インフラ敷設・整備のみを行うといった新たな事業形態による新規市場の創設にも繋がるとしている。
今回の実証事業では、観光・防災・購買促進など異なる分野のサービスを異なるエリアで実施し、ビーコン・インフラを相互利用できる実証を行うことで、プラットフォームの有効性・信頼性を確認すると共に、仕様を公開して2年後の実証事業終了後の事業化を目指す。
なお、リアライズ・モバイル・コミュニケーションズはプラットフォーム設計・構築・事業化検討を、日立はクリーンビーコンの製造およびヒューマン・ナビゲーション・ミドルウェアの提供を、サイバー創研はクリーンビーコンおよびプラットフォームの標準化を、それぞれ担当する。