基礎生物学研究所は6月12日、メダカを用いた研究で生殖細胞が「精子になるか卵になるか」を決定する遺伝子を同定したと発表した。
同成果は基礎生物学研究所の西村俊哉研究員(元総合研究大学院大学)と田中実 准教授らと、九州大学の佐藤哲也 助教、大川恭行 准教授、須山幹太 教授、岡崎統合バイオサイエンスセンターの小林悟 教授(現筑波大学 教授)との共同研究によるもので、米科学誌「Science」に掲載された。
精子と卵子は生殖細胞という共通の細胞から作られることが知られている。生殖細胞は体細胞の性が決定した後、その影響を受けて「精子になるか卵になるか」が決定すると考えられているが、その際に細胞内でどのような遺伝子が働いているかはわかっていなかった。
同研究グループは、生殖細胞でオスとメスに違いのある遺伝子を探索し、foxl3という遺伝子が、卵が作られる過程のメスの生殖細胞で働いているのに対し、オスではその働きが抑制されていることを発見した。また、foxl3の機能が欠損したメダカのメスは通常のメスと同様に卵巣を作るものの、卵巣の中で受精可能な精子が作られていた。これらの結果から、foxl3はメスの生殖細胞で働き、「精子形成を抑制」する機能を持つことがわかった。
foxl3による「精子形成の抑制」を解除すると生殖細胞を取り巻く環境がメスでも精子が形成されるという今回の研究は、体細胞とは独立した性を決めるスイッチが生殖細胞に存在することを示すものとなった。今後は、オスの生殖細胞でfoxl3の発現が抑制されるメカニズム、およびメスの生殖細胞でfoxl3が具体的にどのように精子形成を抑制しているのかについて研究を進めていくという。