ブリティッシュ・エアウェイズは、日本ベースの客室乗務員が同社の前身「BOAC(英国海外航空)」に乗務を始めてから今年で60年を迎えたことを記念して、同社が採用してきたユニフォームの歴史を、貴重な写真と共に公開した。

日本ベース誕生当時、CAが和服で接客する様子。(左)1960年代初期の707機で撮影、(右)1960年代半ばのVC-10機で撮影

CAの制服というとスーツスタイルのイメージが強いが、同社の前身の日本ベースが誕生した当時は、日本人キャビンクルーによる和服での接客が行われていた。また、着物はそれぞれ色やデザインが異なり、伝統的な型とデザインである限りは各キャビンクルーが自由に着物を選ぶことができたという。全員がそろいの制服を着るのが通例の近年とはかなり違った様子であったことがわかる。ここからは、時系列順にユニフォームの写真とその歴史を列挙していく。

BOAC社キャビンクルーユニフォーム(1946年)

英国人デザイナー モーリス・ハーマンによりデザインされた。第二次世界大戦後の厳しい時代背景を反映し、エレガントでウェストをしぼった、紺色のウーステッド地のユニフォームを採用している。






新時代に合わせたユニフォーム(1967~1970年)

1967年から1970年までの英国欧州航空社(BEA)は、新ジェット機時代にふさわしいファッションを取り入れるべく制服を一新。後にエリザベス2世と知られるエリザベス王女殿下の洋裁師でもあった、デザイナーのハーディー・エイミスがデザインを手がけた。

上着の丈を短くし、英国のファッション・リーダーでミニスカートを考案したマリ―・クワントのスウィンギン・シックスディーズ(Swinging 60s’)のファッションスタイルをとらえたもので、赤のコートは鮮やかな色のタッチを与え、新しい制服に合うように作られた。

英国海外航空社(BOAC)スチュワーデスユニフォーム(1970年)

1970年には、クライブ・エバンスのデザインによる、ピンクのテリレンとコットンツイル素材のドレススタイルの制服が作られた。ヨーロッパの夏服、熱帯へのフライトでは年中着用されたこのユニフォームは、コーラル・ピンクとターコイズ・ブルーからCAが選ぶことができた。

このユニフォームに合うピルボックス・スタイルの帽子はドレスを引き立て、英国海外航空ロゴ入りのスカーフはこの当時の現代美術を反映しているという。


新設ブリティッシュ・エアウェイズの初ユニフォーム(1972年)

ハーディー・エイムスにより制作された新しいユニフォームは、BEA社のテーマカラーである濃い赤、白、青色の中から自由にブラウスとスカーフを選べるため、着用する人が個性を楽しめるものとなっていた。

このユニフォームはBEA社とBOAC社が合併する直前に発表され、新設されたブリティッシュ・エアウェイズの初ユニフォームとして1974年に導入された。





世界共通の初のユニフォーム(1977年)

英国トップファッションブランドのバカラ・ウェザーオールにより作成され、世界中で着用するために特別に作られた初めての制服。ウェザーオールは、「ヴォーグ誌に載ってもおかしくない位にエレガントな制服を作る」と約束したと言われている。

クラッシックなテーラースタイルには、赤の裏地付きの、白のピンストライプのスマートな最高品質のジャケットにスカートが選ばれました。ブリティッシュ・エアウェイズのロゴつきのダークブルーの皮のショルダーバッグと小さなつば付き帽子とベルトがマッチした装いとなった。

英国風スタイル(1985年)

このユニフォームは、英国以外のデザイナー(ローランド・クライン)によるデザイン。英国風スタイルに、ルーズなウールジャケットと長めのスカートで、リラックス感あふれるインフォーマルなスタイルを取り入れた。

100%ウールのネイビーのジャケットが特徴で、冬の期間はグレーのスカートに合わせて、赤・青・グレーのストライプのポリエステルでできた長袖か半袖のブラウスを着用。帽子は、ピルボックス・スタイルの帽子だった。

ブリティッシュ・カレドニアンのキャビンクルーのユニフォーム(1988年)

ブリティッシュ・カレドニアン航空は、ブリティッシュ・エアウェイズと合併して、乗客乗員から人気だった独特のスコットランドのタータンチェックが採用されたユニフォームに。

ブリティッシュ・カレドニアン航空のキャビンクルーは「カレドニアン・ガールズ」として知られるようになり、その姿は行く先々で歓迎されたという。この制服は、カニンガムのタータンだ。

伝統的でクラシックなユニフォーム(1993年)

アイルランド人のデザイナー、ポール・コステロによるデザイン。コステロは初期の時代のより伝統的でクラシックなスタイルに戻すことを目的にすえ、デザインによって21世紀の新しいスタイルを生み出すとともに、エレガントでクラシックな英国のクオリティーを連想させるイメージを与えようとした。季節によってフェルトかストローの帽子があわせられた。





現在のブリティッシュ・エアウェイズのユニフォーム(2004年~)

現在のブリティッシュ・エアウェイズのユニフォームは、エリザベス・ハーレイやニコール・キッドマン、カイリー・ミノーグなどの多くのセレブリティの服のデザインを手がけるジュリアン・マクドナルドによるもの。

クラシックでありながらも、現代的なカットが採用されたこのデザインは、ブリティッシュ・エアウェイズの伝統が受け継がれ、細部へのこだわりがスタイリッシュで洗練された装いになっている。