北海道大学は6月2日、地球上の天然ダイヤモンドとして初めて、地下5kmより浅い地殻内で形成されたナノダイヤモンドを発見したと発表した。

同成果は北海道大学、ロシア科学アカデミー、カターニア大学の共同研究グループによるもので、6月1日付け(現地時間)の英科学誌「Scientific Reports」に掲載された。

これまで地球上で発見されているダイヤモンドは全て、地下100kmより深い高温・高圧の条件で形成されたものとされている。一方、本来ダイヤモンドが安定でない低温・低圧の条件でも形成は可能で、実験では地下10kmより浅い条件に相当する温度・圧力でダイヤモンドを得ることに成功している。

同研究グループは、地表からさほど深くない地殻内にもダイヤモンドが存在すると考え、そのような条件に合う蛇紋岩に着目。イタリアのシチリア島で採取した蛇紋岩中の炭素質物質を、透過型電子顕微鏡などを使って分析した結果、大きさが2~10nm程度のナノダイヤモンドを発見した。

このナノダイヤモンドはかんらん岩が水および二酸化炭素との反応で蛇紋岩に変わる時に、ほぼ同時に形成されたと推測され、化学反応の起こる条件や大きさから、地下5kmより浅い地殻の条件に相当する、温度300℃以下、圧力1000気圧以下で形成されたことが分かった。

北海道大学は「岩石と流体との反応や有機物と水との反応は地下のいたるところで起こっていますので、ナノダイヤモンドは今後いろいろな岩石から発見されるでしょう。特に、有機物を含む堆積岩や石油中での発見が期待されます。」とコメントしている。

透過型電子顕微鏡観察により発見したナノダイヤモンド。a) 低倍率で観察したナノダイヤモンド集合体。b) aの白丸部分で観察した電子回折像。ダイヤモンドに特有な回折リング(111、220、311 を付記したもの)しか見られないので、試料はダイヤモンドの集合体であることがわかる。c) 高倍率で観察したナノダイヤモンド集合体。ナノダイヤモンドの大きさが1~3nm であることがわかる(黄色の丸)。大きな黄色の丸部分では、ダイヤモンドに特徴的な0.2nm 間隔の格子縞が70°で交差している。