ソネットは4月27日、多職種連携支援と在宅ケアの業務効率化を目的とした在宅ケア支援システム「bmic-ZR Ver.2.0」の本格提供を4月28日より開始することを記念し、地域包括ケアシステムに関するプレスセミナーを開催し、新機能の紹介や、実際の活用現場の様子などの紹介を行った。
登壇した同社 執行役員の雁瀬繁氏は、10年後となる2025年には団塊の世帯が75歳以上となり、医療や介護ニーズが高まるほか、社会保障の増大といった課題が生じる一方で、住み慣れた地域での介護を受けたい、というニーズが強くなっていく、いわゆる「2025年問題」に触れ、「地域の生活資源をつなぐ、というのが我々の地域包括ケアシステムの考え方」であり、2014年のbmic-ZR Ver1.0提供開始以降、これまで「小児在宅ケア支援」、「多職種連携支援」、「訪問診療業務効率化支援」といった分野にて活用が進められてきたとする。
また、実際に同システムを小児在宅医療のフィールドで活用している医療法人財団はるたか会 理事長の前田浩利氏は、「日本は世界で一番、子供が死なない国。しかし未熟児の出生率が世界一で、10人に1人が未熟児として生まれる。また、高齢出産などに伴う染色体異常の件数も増えている」と、WHO(世界保健機関)の調査で見ても日本の医療水準は他国に比べても高いことを指摘。ただし、中には医療機器と医療ケアが必要な状態で生まれてくる子供、いわゆる「超未熟児」として生まれる場合もあり、そうした子供がNICU(新生児特定集中治療室)に入り、長いと10年以上入っている場合もあること、NICUから出ても人工呼吸器が手放せない場合もあるとし、自身が携わる「あおぞら診療所墨田」の場合、100人いたら、そのおよそ半数が人工呼吸器が手放せない状態にあり、医者や看護師、ヘルパーなどが連携していく必要があるが、その仕組みは十分でないとした。
こうした複数の医療従事者が連携していくことが高齢者介護の分野でも必要であり、「医療が(病院だけでなく)地域の中にはみ出してこないと、安心して暮らせない」とするが、医療職間、医師、看護師、リハビリスト、薬剤師などの職種間のコミュニケーションはそれぞれの文化などが異なるほか、電子カルテを導入しても高いセキュリティや個人情報保護の観点などから、職種間を超えての活用が難しいという課題があるという。
また、電子カルテの場合、複数の患者の情報を網羅的に把握することが困難で、複数の医師同士が電子カルテを見ようと思うと、把握ができないという課題もあったという。
bmic-ZRは、患者の個人情報を保護しつつ、電子カルテと切り離しての運用が可能。時間や空間で切り取って情報を見れるため、そこに属する複数の患者を一括して確認することが可能だという。前田氏は、「使ってみて思ったが、電子カルテがなくても十分な情報共有が可能。入力方法も簡易で携帯メールの感覚でスマートフォンからも入力ができる。患者の家族もネットワークに参加できる可能性がありながら、セキュリティも担保されているため、地域の共通プラットフォームとなれる」と活用してみた結果を総括、今後の活用次第で地域包括ケアの仕組みが進むことが期待できるとした。
そんなbmic-ZRの新バージョンでは、これまでのAndroid OSに加え、iOSにも対応を果たしたほか、当該患者を中心としたケアチームの関係者を一覧で表示できる情報共有やケアチーム内での情報共有を行う連絡板機能を搭載。ケア記録については、定型文を編集できる機能を追加したほとで、スムーズな記録入力が可能となったほか、申し送り内容のソート機能も追加。これにより連絡内容の種別を分類できるようになり、効率の向上が可能となった。
また、ユーザーインタフェースも機能性を重視したものにリニューアル。日常業務を妨げない簡素な記録入力とフラットな情報共有を実現したという。
なおbmic-ZRの価格は初期費用が1万5000円(税別)から、月額が5000円(同)から(別途、利用者ログイン用のICカードが必要)。ASPのため、定期的なバージョンアップによる機能強化やコールセンターによる運用支援も提供される。今後は、ハードウェアやネットワークの導入支援や、導入サポートサービスの提供なども提供することで、空気のようなITを目指したより使い勝手の高いシステムの実現を進め、在宅医療などの支援を強化し、患者やその家族の生活を支えていけるシステムにしていきたいと同社では説明している。