岡山大学(岡山大)はこのほど、電気信号を制御するタンパク質を人工的に創成することに成功したと発表した。

同研究成果は岡山大大学院医歯薬学総合研究科(薬)の須藤雄気 教授、名古屋工業大学工学研究科の井上圭一 助教らの共同研究グループによるもの。2月24日付け(現地時間)の米化学会誌「Journal of the American Chemical Society」電子版に掲載された。

行動や情動、記憶などを司る脳神経活動は電気の流れ(電位)によって制御されている。電位を制御するタンパク質はイオン輸送体と呼ばれ、イオンを濃度勾配に逆らって運ぶイオンポンプと濃度勾配に従って運ぶイオンチャネルが存在する。

同研究グループは、ポンプとチャネルを有し、光によって活動するレチナールタンパク質に着目。このレチナールタンパク質のポンプとチャネルの構造を比較したところ、光を吸収する発色団部分に大きな違いがあることが分かった。

そこで、両機能の発色団構造を一致させるために、イオンポンプ内の3つのアミノ酸残基(タンパク質を構成する分子)に異なるアミノ酸を導入した。導入した人工分子を大腸菌とアフリカツメガエルの卵母細胞に発現させたところ、電位差に依存した水素イオンの移動が両実験で観測され、イオンポンプからイオンチャネルを作り出すことに成功した。さらに、この人工分子を調べたところ、天然のイオンチャネルと似た構造的・分光学的特徴を示すことがわかり、機能だけでなくさまざまな性質もチャネル型へと変換したことが確認された。

この人工分子は、遺伝子工学・タンパク質工学の適用に優れた大腸菌で大量に調製することが可能なため、これまで難しかった機能の向上や改変が簡便化され、新たな機能性分子の創成における基板分子となることが期待される。また、同研究で得られた機能変換を通じて、うつ病をはじめとする神経疾患への適用や新薬の開発につながる可能性がある。

光駆動イオンチャネルをタンパク質光学的に創成することに成功

イオンポンプ(紫)とイオンチャネル(オレンジ)の構造比較