痛風の発症に関わる5つの遺伝子を日本の研究グループが発見した。ヒトゲノム全体にわたって遺伝子の個人差を調べる大規模なゲノムワイド関連解析(GWAS)で突き止めた。5つの遺伝子のうち3つは新しく見つかった痛風関連遺伝子で、一部は痛風の病型との関連も浮上した。痛風の治療に貢献する成果といえる。

図. 日本人男性の痛風患者のゲノムワイド関連解析で発見された5カ所の痛風関連遺伝子(提供:防衛医科大学校)

防衛医科大学校の松尾洋孝(まつお ひろたか)講師、中山昌喜(なかやま あきよし)医官、崎山真幸(さきやま まさゆき)医官、久留米大学の山本健(やまもと けん)教授、国立遺伝学研究所の中岡博史(なかおか ひろふみ)特任研究員ら国内16研究施設の40人の研究者、医師による共同研究で、2月2日付の英医学誌Annals of the Rheumatic Diseasesオンライン版に発表した。

生活習慣病の痛風は「風が吹いても痛い」と言われるほど激しい関節痛を引き起こし、高血圧、脳卒中などのリスクとなることが知られている。全国の患者は予備群も含めて約1000万人と推定され、男性に圧倒的に多く、ここ数十年、増え続けている。近年の遺伝子研究で、痛風の発症には遺伝的要因の関与が考えられているが、その全容は不明だった。

研究グループは、大阪、京都、東京の3カ所の医療機関を受診した痛風の男性患者945人と対照の1213人で、約70万カ所の一塩基多型(遺伝情報の個人差)を比較した。痛風の発症と関連する候補となった一塩基多型については、別の集団(痛風患者 1048 人と対照者 1334 人)で再現性を追加検証した。その結果、ABCG2 、SLC2A9、MYL2と CUX2 の間、GCKR、CNIH-2の計 5 カ所の遺伝子領域で強い関連が見られた。このうち、 MYL2-CUX2、GCKR、CNIH-2 の3カ所は初めて痛風関連遺伝子とわかった。

今回の研究は、アンケートなどによる自己申告の症例は対象とせず、医師が確実に診断した痛風症例のみを対象とした世界で初めてのGWAS。このため、痛風の病型ごとの詳細な解析が可能になり、病型ごとにどの遺伝子が特に関連しているかについても探った。ABCG2は腎負荷型の痛風、SLC2A9は腎排泄低下型の痛風とそれぞれ関連性が高い傾向が浮かび上がった。痛風は病型で薬が異なるため、遺伝子診断が薬を選択する際の指針になる可能性を示した。

研究グループの松尾洋孝講師は「近年増えつつある痛風患者の遺伝的リスクを判定するためにどの遺伝子が重要であるのかを発見した。痛風を発症するリスクの高い人を早期に見つけて予防すれば、生活の質(QOL)の維持・向上につながる。どの病型になりやすいかを予測することで、治療薬の選択に役立つ。個人差に応じた適切な医療の実施で、医療費の削減につながることも期待できる」と成果の意義を指摘している。