Touch IDの将来的な機能拡張も期待できる

米Appleが指紋認証システム「Touch ID」に関して申請した特許が2015年1月15日(現地時間)、米特許商標局(USPTO)によって公開されている。基本的にはTouch IDが持つ指紋登録機構や、Apple PayやサードパーティへのAPI公開で提供されるようになったサービス認証やオンライン/オフライン決済に関するものが中心だ。だが「iCloud経由での指紋同期」「BluetoothやNFCによる指紋データのデバイス間での直接転送」といった仕組みも示されており、Touch IDの将来的な拡張が期待される。

申請番号は20150016697で「FINGER BIOMETRIC SENSOR DATA SYNCHRONIZATION VIA A CLOUD COMPUTING DEVICE AND RELATED METHODS」の特許名が示されている。発明者はGreg Kerr氏となっているが、同社が2012年に買収したAuthenTecのエンジニアだった人物だ。申請日は2013年7月10日となっており、AuthenTec買収後にAppleが提出したものだと考えられる。ただしLinkedInのプロフィールによれば、Kerr氏はAuthenTecが買収された後にAppleへと移籍したが、その後わずか5カ月ほどで同社を辞め、少しの休眠期間の後に米InmarのCTOとなっている。そのため、この買収前後のタイミングで準備された特許申請だったのかもしれない。

冒頭の説明のように、本特許における記述内容は指紋登録から認証まで、Touch IDの基本的な動作を記したものであり、特記事項はない。特にApple Payが発表された今日においては、「Touch IDの指紋センサーを使った店舗やオンラインでの決済」という仕組みが特にニュースになることもないだろう。注目すべきは指紋データの扱いの部分で、現在は各デバイス内の専用領域に保存され、基本的にデバイスに結びつけられている指紋登録データが、iCloudに保存されたり、あるいはiCloudを介してデバイス間で同期できるような仕組みが提案されている。またiCloudを介さずとも、BluetoothやNFCといった近距離通信を使った指紋登録情報の転送が行えるようになっている点が特徴だといえる。この機能が実際に将来のiOSバージョンで導入されるかは不明だが、セキュリティ的な議論も含め、今後の注目となるのは間違いない。