写真. 第1回チャンドラセカール賞に選ばれた一丸節夫・東京大学名誉教授 |
アジア太平洋物理学会連合(AAPPS)プラズマ物理部門(部門長・菊池満日本原子力研究開発機構核融合研究開発アドバイザー)は、プラズマ物理学の顕著な進歩に貢献した研究者に授与する第1回チャンドラセカール賞の受賞者に一丸節夫(いちまる せつお)東京大学名誉教授(79)を選んだ。授賞理由は「強結合プラズマ理論の構築と適用に関する貢献」。この賞は、インド生まれの米国の天体物理学者で、プラズマ物理学に貢献した1983年ノーベル物理学賞受賞者のチャンドラセカール(1910~1995年)を記念して2014年に創設された。
太陽、木星、白色矮星、パルサー、中性子星などの中心部の物質は、クーロン相互作用エネルギーが運動エネルギーより大きい「強結合プラズマ」の状態となり、プラズマでありながら、気体・液体・固体相が存在する。一丸節夫氏は、このような強結合プラズマの理論を構築し、1982年の米物理学会誌Reviews of Modern Physicsに発表した。この研究は、幅広い分野に大きな影響を与えた。また、強結合プラズマでは核融合反応率の増幅が起こることを見いだし、白色矮星中心部等における反応の正確な評価を行った。さらには、ブラックホール近傍の降着円盤の遷移現象を巧みに説明する理論を構築するなどプラズマ物理学に大きく貢献した。
アジア太平洋地区から推薦された5人の候補者の中から国際選考委員会で、その卓越したプラズマ物理学の業績が評価されて選出された。一丸節夫氏は1935年生まれ、58年東京大学工学部卒、62年米イリノイ大学博士課程修了(PhD)、イリノイ大学やプリンストン高等研究所、東京大学の工学部、理学部物理学科などで研究、教育に携わり、現在は東京大学名誉教授。「多くの方々の推挙を受け、アジア太平洋地域の同僚科学者の評価で、チャンドラセカール賞の受賞になりましたことを光栄とし、うれしく思っています」と語った。賞状とメダルは2016年12月にオーストラリアのブリスベーンで開かれるアジア太平洋物理学会で授与され、受賞講演も予定されている。