国立がん研究センター(国がん)は12月18日、野菜と果物の摂取と胃がんの関連性について、長期追跡調査を実施した約19万人のデータを用いて解析した結果、野菜摂取が日本人に多い男性の下部胃がんリスクを低下させることが示されたと発表した。
同成果はがん予防・検診研究センター予防研究部長 笹月静氏らの研究によるもので、欧州のがん専門誌「Annals of Oncology」に掲載された。
国がんでは、国内で行われているコホート研究(大規模な対象集団を設定し、最初に生活習慣などについてアンケート調査などを行い、その後長期にわたって病気の発生を観察する研究)を取りまとめて解析を行うことで、日本人の生活習慣とがんのリスクの関連を評価する研究を行っている。
今回の調査で対象となったのは4つのコホート研究に参加している約19万人。調査開始時の食事に関するアンケート調査から野菜・果物の摂取量を、1日に摂取する野菜全体、緑黄色野菜、果物全体、野菜と果物全体で推定し、摂取量の低い順にQ1からQ5までそれぞれ同じ人数になるように5つのグループに分類した。その後、平均で約11年の追跡期間中に胃がんになった人達について、摂取量カテゴリーごとの胃がんリスクを比較した。なお、喫煙など胃がんに関わる他のリスク要因が結果に影響しないように、調整を行った。
その結果、胃がん全体のリスクでは、野菜も果物も、男女とも摂取量が多いほうがリスクの低下傾向が見られたが、統計学的に有意ではなく、大きな差はみられなかった。一方、胃の下部2/3に発生する下部胃がんについては男性で野菜全体の摂取量が最も少ない群(Q1)に比べて、摂取量が多いほどリスクが低い、統計学的に有意な傾向がみられた。また、緑黄色野菜の摂取量についても、同様の結果が得られた。これらは、野菜・果物に含まれる抗酸化作用のある成分が、下部胃がんのリスクを上げることが確認されているピロリ菌による発がんに予防的に働いたためと推察されている。