東京都のベッドタウンとして成長してきた千葉県は、名字の面でも東京都と共通するところが多いのだろうか? また、海の幸を多く抱える地域だけに、千葉県ならではの名字も少なくなさそうだ。東京都で多い名字ランキングとも比較しながら、千葉県の名字事情を追ってみよう。
「鈴木」さんの47%が関東地方に集中
千葉県の名字ランキングの1位は、およそ15万8,000人が住んでいる「鈴木」さん。「鈴木」さんは全国におよそ179万9,000人と2番目に多く、群馬県を除く関東の1都5県で1位となっている、特に関東でよくみられる名字だ。関東地方に住む「鈴木」さんはおよそ85万1,000人なので、全国の「鈴木」さんの47%が関東地方に集中していることになる。
2位は千葉県におよそ9万2,000人いる「高橋」さん。「高橋」さんの全国順位は3位で、「高橋」さんは群馬県と愛媛県で1位になっている。3位は「佐藤」さんで、およそ8万6,000人いる。「佐藤」さんの全国順位は1位であり、関東地方では千葉県のほかに、栃木県・群馬県・埼玉県でも3位、また、東京都・神奈川県では2位になっている。
「佐久間」さんの22%が千葉県民
全国順位が30位以下であっても、千葉県では30位圏内になった名字はいくつかある。千葉県6位の「石井」さんは全国順位だと37位であり、そのほか、14位は「小川」さん(全国32位)、21位は「長谷川」さん(全国34位)、24位は「平野」さん(全国88位)、25位は「遠藤」さん(全国38位)、29位は「佐久間」さん(全国255位)である。
「佐久間」さんは千葉県におよそ2万人、全国人数はおよそ8万9,500人なので、全国の22%の人が千葉県民ということになる。もともとは狭い谷間を表す狭隈(さくま)と表記し、ルーツは、現在の千葉県南部にあたる安房国平群郡佐久間村(狭隈郷)とされている。全国順位では255位の「佐久間」さんが千葉県に多いのは、千葉県発祥の名字であるためと考えられる。
「七五三」さんや「海宝」さんも
千葉県にみられる珍しい名字としては、「醤油(しょうゆ)」さん(全国およそ20人)があげられる。千葉県は野田市や銚子市の醤油産業が有名なため、職業が名字の由来になった可能性がある。また、全国人数およそ600人の「七五三(しめ)」さんは、現在の千葉県北部である下総国結城郡七五三場がルーツのひとつとされており、立ち入り禁止の聖地が語源だ。
千葉県は東京湾と太平洋に面している地形なので、海の字がつく「海宝(かいほう)」さんという名字もある。「海宝」さんは全国人数およそ1,200人のうち、90%以上のおよそ1,100人が千葉県民である。他にも、「兀脇(はげわき)」さん(全国およそ20人)、「大海原(わたのはら)」さん(全国およそ30人)、「伴流(ばんりゅう)」さん(全国およそ50人)、「伊介(いかい)」さん(全国およそ100人)、「絵鳩(えばと)」さん(全国およそ100人)など珍しい名字の人が千葉県にもいるようだ。
千葉県民の「千葉」さんは意外と少ない
県名と同じ「千葉」さんの全国順位は86位で、全国人数はおよそ20万8,000人。下総国千葉郡(現在の千葉県千葉市周辺)に土着した、桓武平氏の元祖「高望王(たかもちおう)」の子孫が「千葉」姓を名乗ったことがルーツとされている。ところが、「千葉」さんの千葉県内順位は116位と、全国順位と比べて低い順位になっている。
その一方で、下総の「相馬」さんや「東」さん、「国分」さん、「武石」さん、「矢作」さんなど、「千葉」さんから分派した名字は比較的多く、鎌倉期に「千葉」姓を名乗った人々の影響は大きかったものと考えられる。なお、現在の千葉県にあたる三国の旧国名と同じ「安房(あわ)」さん(全国およそ300人)、「下総(しもふさ)」さん(全国およそ600人)、「上総(かずさ)」さん(全国およそ840人)も千葉県にいる。
千葉県の名字ランキングベスト30には、東京都で多い名字ランキングと83%(25件)の名字が共通してランクインした。これは、千葉県が東京都に近い場所にあるため、昔から名字の分布が似ていたことが理由と考えられる。神奈川県で多い名字ランキングでも同様だったので、共通名字の多さは東京都のベッドタウンの傾向と言えるのかもしれない。
※ランキングは、月間400万アクセスの「名字由来 net」アプリと「名字由来 net(Web)」の名字データベースから、電話帳データをもとに千葉県・東京都・神奈川県で実世帯が確認できるもののみを集計し、人数の多い順に抽出。100人未満四捨五入により算出している。本文と写真は関係ありません
筆者プロフィール : 名字由来 net(リクルーティング スタジオ)
月間400万アクセスの「名字由来 net(アプリ・Web)」や月間200万アクセスの「無料 赤ちゃん名づけ」アプリなど、名字・名前・家系図に特化したサービスをアプリとWebで提供している。「名字由来 net」はApp Store 総合第1位200万ダウンロード、「無料 赤ちゃん名づけ」は App Store ジャンル第1位の実績。名字情報を活かしたシミュレーションゲームアプリ「戦国村を作ろう!」に引き続き、2014年11月には、現世界を舞台にした「世界村を作ろう!」をリリースした。