日本電気(NEC)は11月20日、スマートフォンやタブレットなどのモバイル端末のみでネットワークを構築し、端末経由でライブ映像の配信ができる通信技術を世界で初めて開発したと発表した。

災害現場の様子を管理者に映像で送信

この技術により、トンネル、地下、建設中の高層ビルなどの工事現場や、大規模災害時など、3G/LTEおよび無線LANアクセスポイントなど既存の通信インフラが利用できない環境でも、現場で撮影した映像を管理者へリアルタイムに配信できる。

また、スタジアムなど多くの人が一斉に集まりネットワークが混雑する環境でも、通信事業者が提供する3GやLTEのネットワークに負荷をかけずに、試合やイベントの様子などの映像を観客の数万台以上のモバイル端末に広く配信可能になるという。

新技術は、端末間の通信方式として、暗号強度が強く高速通信が可能なWi-Fi Directを利用し、通常は端末間で接続のたびに必要となる暗号鍵を一時的にためておく(キャッシュする)方式を採用。これにより、無線LAN(Wi-Fi)を利用する端末が密集し電波干渉が激しい環境において、端末が移動し接続が一時的に切断された場合でも、1秒程度で別の端末に再接続してネットワークを維持可能となる。

また、Wi-Fi Directのグループ間で数台の端末を短周期に入れ替えて情報をリレーすることで、多数のグループ間の通信が可能となり、ネットワークの大規模化を実現。これらにより、高速で大規模な端末間通信を実現する。

また、通信を行う端末数や同一の周波数チャネルを利用している端末数が過度に多い場合でも、周波数の競合により通信不能となることを抑制する技術を開発。大規模に映像配信する場合には、複数の周波数チャネルを切り替えながら、送受信する端末間で相互に配信タイミングをずらすことでパケットの衝突を抑制、例えば、5つの端末間で通信を行う環境においても、伝送速度1Mbps以上の映像配信が可能となる。

さらに、映像を中継する途中の端末からのデータ転送が途切れても、同一の映像を保有する別の端末から映像データの転送を自動継続できる、配信元切り替え技術を開発。中継端末を適当に配置するだけで冗長化できるので、映像配信の確実性が向上する。

NECは、今後も安全・安心な社会のインフラとなるネットワークの開発・実用化を目指すとしている。