新入団選手を決めるドラフト会議や、日本一のチームを決める日本シリーズで盛り上がり、現在はFA移籍戦線に注目が集まる―。そんな華やかな舞台の裏側で、今年もプロ野球の世界を去って行く選手たちがいる。今回は、ユニフォームを脱ぐ決断をした戦士たちにスポットライトを当て、彼らの引退発表時のコメントを紹介して、その功績を振り返ってみたい。
セ・リーグ編
■久保田智之
「ジェフ、球児と一緒に『JFK』と呼ばれるようになって、全国の人に知ってもらえて僕自身幸せでした」
阪神の希代のリリーバーが引退を決断した。ジェフ・ウィリアムス(Jeff)、藤川球児(Fujikawa)と「JFK」を形成し、2005年のリーグ優勝に大きく貢献した久保田(Kubota)。一時代を築いた「松坂世代」が、また1人、現役を引退してしまった。
埼玉・滑川高時代は捕手と投手を兼任し、甲子園のマウンドにも登った。甲子園初出場ということに加え、「背番号2の正捕手が、リリーフとして投げ、しかもトルネード投法」という珍しさで一躍、注目を浴びる。
投手願望が強かったため、投手として誘われた常磐大に進学し、150キロを超えるストレートで押す投球で活躍した。卒業後に阪神へ入団。2007年に記録した90試合登板は、シーズン登板数のプロ野球記録であり、久保田がいかに鉄腕だったかを物語る。
阪神では久保田のほか、オリックスでも活躍した19年目のベテラン捕手・日高剛、2000年ドラフト2位で横浜に入団し、ロッテでも活躍した左腕・吉見祐治らが引退を表明している。
広島では、横山竜士が引退した。球団5位の507試合に登板、球団1位の110ホールドを記録し、広島の暗黒時代を支えた右腕は「カープの未来は明るいです! 」と言葉を残し、選手人生に別れを告げた。
中日の三瀬幸司、小林正人、鈴木義広は一緒に引退試合を行った。巨人では石井義人、DeNAからは育成選手のケビン・モスカテルが、ヤクルトからは、阿部健太と山本斉の両投手と、新田玄気捕手がそれぞれ、現役引退を表明している。
パ・リーグ編
■金子誠
「最後に今日は僕のために集まってくれて、ありがとうございました」
どんな状況であっても、常に己の技を磨き、見えないところでチームに貢献してきた金子誠。ファイターズが北海道に移転してから人気もチーム力も向上し、常勝軍団に成長できたのは、間違いなく金子のおかげといってよいだろう。
■稲葉篤紀
「中田翔のことをよろしくお願いします」
現役20年間で通算2000安打を達成した以外にも、球界への貢献が評価された稲葉。自分のことを語る代わりに、チームを背負っていく後輩の中田に対して奮起を促すなど、心憎いコメントを残した。その性格は「人格的にも野球に取り組む姿勢は模範になる」といわれ、パ・リーグ特別功労賞の受賞も決まった。
パ・リーグのCSファイナルステージ最終戦で、ソフトバンクに敗れた日本ハム。試合後は両チームの選手が入り乱れ、金子と稲葉は胴上げされた。パ・リーグを長く支えてきた2人へのささやかなサプライズであった。
また、西武やオリックス、そして日本ハムとパ・リーグ一筋でプレーした、赤田将吾も引退を発表している。
■里崎智也
「来年2015年は、21世紀に入って千葉ロッテマリーンズが最も輝く、5年に1度のゴールデンイヤーの周期が来ます」
2005年、2010年ともに司令塔としてチームを日本一に導いた、里崎らしいコメントだろう。2015年は5年周期で日本一になる年だと確信し、「これからの時代を担う選手たちが必ず来年日本一になってくれると僕は信じています」と後輩へ希望を託した。
同じくロッテで活躍し、独立リーグを経て、7月から西武でプレーした小林宏之もユニフォームを脱ぐ。また、1990年代のオリックス黄金期にストッパーとして君臨した平井正史や、アメリカ、日本、イタリアでプレーしたG.G.佐藤らも引退を表明している。
上記の選手以外にも、既に戦力外通告を受けた選手たちがたくさんいる。現時点では、プロ野球の世界から身を引くのか、それともトライアウトを受けるなど、わずかな可能性に懸けて現役を続けるのか、未定の選手たちも多い。
数多くの戦士たちがユニフォームを脱ぐ決断をした2014年。たとえわずかな在籍期間であっても、プロ野球の世界に足跡を残した選手たちの輝きは、決して色あせることはないだろう。
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