三菱マテリアルは10月29日、連結子会社である三菱伸銅と共同で、電気的な接続信頼性を維持しながら端子挿入時の摩擦抵抗を低減した、自動車コネクタ端子用めっき「PIC(Precise Interface Control)めっき」を開発したと発表した。

近年、自動車電装化の進展にともない、電装部品におけるコネクタ類も小型化・多極化が進んでいる。小型化・多極化した電装部品のコネクタでは、コネクタ端子の接触面積が増大することで、コネクタ端子挿入時の摩擦抵抗が増大する。一方、コネクタ端子の挿入作業が主に手作業であることから、端子挿入時の摩擦抵抗が増大すると接続作業性が低下してしまうため、低摩擦性のコネクタ端子が求められている。

また、コネクタ端子用の銅合金では、電気的な接続信頼性を高めるためにリフローすずめっきの表面処理を施すことが一般的である。しかし、表面のすずめっき層が軟らかいことから、端子挿入時の摩擦抵抗が増大してしまうという課題がある。この課題に対して、低摩擦性のすずめっきがあり、銅合金層とすずめっき層の界面に生じる銅すず合金を、表面に露出させることで摩擦抵抗を低減しているが、表面の純すず成分が少ないため電気的な接続信頼性が低下するという欠点がある。このように、摩擦抵抗を低減しながら電気的な接続信頼性を維持することに、従来は一定の限界があった。

今回、三菱マテリアルと三菱伸銅は、独自技術を応用し、銅合金層とすずめっき層の界面に生じる銅すず合金の形状を制御することで、摩擦抵抗の低減と電気的な接続信頼性を両立した「PICめっき」を開発した。同製品は、純すずより硬度が高い銅すず合金を柱状にし、すずめっき表面に銅すず合金を数µm間隔で形成するものである。これにより、めっき表面の動摩擦係数は、従来比の約70%と大幅に低減している。また、低摩擦性のすずめっきでは十分でなかった電気的な接続信頼性については、柱状で点在する銅すず合金の隙間に多くの純すず成分を残存させることで確保している。

摩擦抵抗に関しては、おす端子材とめす端子材の両方に「PICめっき」を使用すると最大の低減効果を発揮するが、めす端子材のみに使用するだけでも低減効果を実現できるという。さらに、グループ会社の開発品である耐応力緩和特性に優れた銅-亜鉛系合金「MNEX」をはじめ、各種銅合金にも適用可能となっている。

(左)従来品のリフローすずめっきと(右)「PICめっき」の断面イメージ図

すずめっき表面像。(左)従来品のリフローすずめっきと(右)「PICめっき」