飛行機の座席は何かと問題のタネだ。トイレに行くために横の人に頭を下げなければならないし、前の座席が最大限にリクライニングするとさらに狭くなる。前の座席のリクライニングを防ぐ小さな装置が米国でヒットしているが、これを使った乗客とリクライニングを阻止された乗客が喧嘩になり、フライトは緊急着陸するという事態に陥ったという。

CNNが8月25日に報じたところによると、ニューヨークのニューアークを出発してデンバーに向かっていたUnited Airlineの1462便の機内で、座席のリクライニングを巡って大騒動が発生した。

目的地まで4時間以上あるフライトであり、くつろぎたいのも無理はない。ところが、ある女性が座席を倒そうとしたところ、倒せない――なぜなら、後ろに座っていた男性が前の座席のリクライニングをストップする小さな装置を仕掛けていたためだ。

そこで、困った女性は客室乗務員を呼ぶことに。客室乗務員はこの男性に装置を外すように話したが、男性は拒否。すると、座席を倒せなかった女性がこの男性の顔に水を浴びせかけたという。この事態を受け、パイロットはダイバートを決定し、フライトは急遽シカゴ・オヘア空港に着陸したとのことだ。

男性が使っていたのは「Knee Defender」という小さなプラスチック製の装置だ。自分のテーブルを支える棒部分(通常は前の座席に連結している)に固定することで、前の座席がそれ以上後ろに倒すことができなくなるというもの。価格は21.95ドル。USA Todayは「必須の旅行ガジェット」と評しており、飛行機の利用が多い米国では話題のようだ。装置が発明されたのは2003年で新しいものではないが、今回の緊急着陸事件により話題が沸騰しているようだ。

「Knee Defender」

飛行機の狭い座席で足が動かせないことが主な原因で血管が詰まってしまう「エコノミークラス症候群」の危険が指摘されて久しい。だが、飛行機の座席間隔はいっこうに広くならない。それどころか格安航空会社(LCC)などはこれまでよりも狭い機材を用意しているところも多い。

なお、今回トラブルが発生した男女はともに、エコノミー席より10センチほど間隔が広い「Economy Plus」に座っていたというから、座席の間隔に対する不満は大きいと言えそうだ。

Knee Defenderは正に消費者の"ニーズを満たす"アイディア商品と言えるが、航空会社は対応に苦心しているようだ。United Airline、Air Canadaなどは同装置を禁止しているようだが、Singapore Airなどケースバイケースで対応している航空会社もあるとCNNは報じている。規制当局の米連邦航空局(FAA)は各航空会社の決定に任せているという。

この便利で迷惑な装置、日本でも利用が進むかもしれない。次に飛行機に乗ったときにリクライニングができなかったとしても、フライトを緊急着陸させることなく穏やかに対応したい。