『ガンダム Gのレコンギスタ 特別先行版』の舞台あいさつに出席した富野由悠季監督

8月23日よりイベント上映がスタートした富野由悠季監督の最新作となるアニメーション作品『ガンダム Gのレコンギスタ』の舞台あいさつが24日、東京・新宿ピカデリーで行われ、富野監督に加え、石井マーク、嶋村侑、佐藤拓也らキャスト陣が登壇した。

富野監督にとってガンダムシリーズの制作は、2005年~06年に公開された劇場版『機動戦士Zガンダム』3部作以来約8年ぶりとなるが、完全新作としては1999年『∀ガンダム』(ターンエーガンダム)以来の約15年ぶり。本作について兼ねてから"子供たちのための物語"と宣言していた富野監督は「ガンダムを使って"脱ガンダム"をしながら、大人のものになってしまったアニメを、子供に戻すために考えたのがこの企画です」と改めてコンセプトを強調。そして、大人たちには「次の世代の子供たちにこういう作品があるんだよということを、ご紹介いただけたらありがたく思います」と呼びかけている。

アニメを再び子供の手に戻すこと――富野監督は、ここに至るまでの流れを「35年間のガンダムの歴史の中で、アニメが段々大人たちのものになってきてしまったということは、逆に自分が孫を持った時、この状態が本当に良いのだろうかと考えるようなった」と述懐。そして「ガンダムワールド」的な進化のさせ方に着地しない作品づくりを命題としながら、「新しい世代にはこういうアニメもあるんだよと知らしめることで、次の突破口を開いていきたい」と、"脱ガンダム"と"新たなガンダム"の同時性を追い求めていったという。

ただ、子供のための作品づくりが決して簡単なことではなく、富野監督は「自分の思考回路や好みだけでは絶対に作れない。その面倒さのおかげで、逆に言うと自分自身が子供目線に降りたとは言わない、降りられるとも思っていない」と断言。子供のために作るということを「手業を見せることではなくて、自分をもう一度元気にさせてもらうこと。おじいちゃんの立場で、子供たちや孫たちの顔を思い浮かべ、喜んでくれることを考えれば、自分自身もあと1、2年長生きができるかもしれない――そういう力をもらえる」と説明している。同時に「今の大人たちは、てめえたち自分の世代のことしか考えていない。自分が死ぬまでのことしか考えていない。だから100年先に対しても無責任な発言を平気できるんだ」と富野節をさく裂させながら、大人に対して「たまにはこんなものも観てみたら? と逆説的な意味で、大人にはとても痛い作品になっているかもしれない」と話した。

今年1月に行われた、米ハリウッドの制作会社「Legacy Effects(レガシー・エフェクツ)」の提携会見時には、東京のアニメ制作現場が「疲れ切り始めているのではないかと感じている」と語っていた富野監督。しかし、『ガンダム Gのレコンギスタ』のスタジオワークを通して「まだまだ東京のアニメ制作事情は、決してどん底まで落ちていはいないということも確認した」という。さらに「次の10年、20年に向かって作るという気概がある。問題なのは、その時に僕がいないということ(笑)。90過ぎまで仕事をさせるな!」と語り、会場を笑わせていた。

物語の展望については、旅立ちの出発点から目的地へ、さらに目的地からまた帰ってくると流れをスピーディーに描いているようで、富野監督は「これは"ロードピクチャー"だった」と表現。それは意識的にしたことではなく、ベルリとアイーダの単純な物語と宇宙世紀以後の収拾のつけ方がある種の設定話に陥っていたところで、実際に二人が動き出したのを観て、"ロードピクチャー"的視点を手に入れることができたという。しかし、富野監督はそれを「地獄の始まり」として、「こんなにまでキャラクターが出てきて、こんなにまでやられメカが出てきて、こんなにまでガンダム系のモビルスーツが出てきて、ふざけんじゃねえよ! っていう状況に陥った。スタッフの数が足りないので今パンク寸前です! がんばるぞ!」と意気込んていた。

また、主人公のベルリ・ゼナムを演じる石井マークは、富野監督から「腹から声だせ!」と一括されたエピソードを紹介しながら、「技術面はこれから高めていかなければなりませんが、立ち向かうことはできます。負けることなく体当たりで富野監督についていきたい」と宣言。また、アイーダ・スルガン役の嶋村は、第2話のとある場面を挙げ「ずっと自分の中でああでもない、こうでもないと溜め込んできたものをやっとはきだせたシーンです」と見どころを明かした。もともとガンダムファンであるという、ルイン・リー役の佐藤は「僕らが子供の頃見ていたアニメってこうだったようなって感じるところがあり、どこか懐かしさもある。若い人にはこういうにぎやかなアニメがあるんだ、愉快なアニメがあるんだと感じて欲しい」と、本作の魅力を伝えていた。

『ガンダム Gのレコンギスタ』は、これまで富野監督が描いてきた宇宙世紀(ユニバーサル・センチュリー)の後の時代である「リギルド・センチュリー」を舞台に、軌道エレベータ「キャピタル・タワー」を守る「キャピタル・ガード」候補生のベルリ・ゼナムと、アイーダ・レイハントンという宇宙海賊の少女が搭乗する謎のモビルスーツ「G-セルフ」の出会いから、壮大な物語が描かれていく。8月23日~9月5日の2週間限定で上映される『ガンダム Gのレコンギスタ 特別先行版』は第1話から第3話をまとめた作品で、10月より放送されるTVアニメに先行して公開されている。

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