日本HPは8月7日、ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)向けシステムの新シリーズ「HP Apollo」ファミリとして「HP Apollo 6000 System」(以下、Apollo 6000)と「HP Apollo 8000 System」(以下、Apollo 8000)を発表した。

「HP Apollo」シリーズは、ビッグデータ、HPC、Webスケールアウトなど、ハイパースケール市場向け製品で、TCO (総所有コスト)を低減しつつ、設置スペースの削減を目指すもの。

「HP Apollo 8000 System」(左)と「HP Apollo 6000 System」(右)

日本HP HPサーバー事業統括本部 アライアンス・ビジネス開発本部 本部長 宮本義敬氏

日本HP HPサーバー事業統括本部 アライアンス・ビジネス開発本部 本部長 宮本義敬氏は、「最近はワークロードが多様化しており、今後HPはワークロードに最適化したサーバを提供していく」と語った。

同社ではワークロードを、TCOの削減が求められるコア・ビジネス、より信頼性が求められるミッションクリティカル市場、統合化が求められる仮想化/クラウド市場、ビッグデータ、HPCなどスケールアウト市場の4つに分けており、「HP Apollo」は、スケールアウト市場向け製品。

HPが定義した4つのワークロード

宮本氏はスケールアウト市場に求められる要件として、高密度と省電力を挙げ、「次世代のスパコンのニーズを考えると、今のテクロジデーでは立ち行かなくなる時代が訪れる」と、新たに「HP Apollo」シリーズを提供する背景を説明した。

宮本氏が次世代のスパコン向けに改善すべき課題として挙げたのは、冷却効率の改善、電力消費の抑制、コンピュート密度の向上、面積あたりのteraflopの最大化で、これを具現化したのが、Apollo 8000だ。

次世代のスパコン向けに改善すべき課題

Apollo 8000は、米National Renewable Energy Labs(NREL)用に開発されたものを、一般販売するもの。ラック単位で出荷され、1ラックあたり、最大144台のサーバ(144×2ノード)を搭載可能だ。

Apollo 8000の概要

Apollo 8000の最大の特徴は水冷システムの採用。これはCPU、GPU、メモリを冷やすもので、サーバ内部に設置させたヒートパイプを利用して集めた熱を側面に集約し、それを水で冷やす。サーバ内部に水を通す仕組みではないため、水漏れによる障害リスクが少ないことと、常温(摂氏25度以上)の水を利用するため、水を冷やすための電力が不要な点がポイントだという。

Apollo 8000の水冷システム

Apollo 8000に搭載されたサーバ「HP Proliant XL730f」

空冷式のデザインに比べて1ラックあたり4倍のテラフロップを提供、1ラックあたり250Tflop超を可能にする。また、infiniBandスイッチも標準搭載している。

NRELでは、Apollo 8000により、年間の運用コストを最大80万ドル、廃熱を再利用することで、建物の暖房費もさらに20万ドル削減できる見込みだという。

NRELでの効果

価格は、2億3,289万円(推奨構成×144ノード、水冷ラック一式、別途配管、工事やファシリティ側の対応が必要)。

一方Apollo 6000は、効率性を追及したマルチノードサーバでシングルスレッドのワークロードに最適化されている。空冷サーバラックデザイン、外付けのパワーシェルフを備えたApollo 6000は、5Uラックに最大160サーバを格納できる高密度を実現している。1.5Uのパワーシェルフには、6基のPlatinum電源が搭載され、これを最大4シャーシで共有できる。価格は最小構成×20ノードで484万4,000円となっている。

Apollo 6000の概要

Apollo 6000に搭載するサーバ「HP Proliant XL220a Gen8 v2

Apollo 6000のシャーシ(下)。上はパワーシェルフ