名古屋大学(名大)は7月4日、重力マイクロレンズ現象を用いることで、地球から3000光年離れた連星系の片方の星をまわる地球に似た惑星を発見したと発表した。

同成果は、名古屋大学太陽地球環境研究所の阿部文雄 准教授、大阪大学大学院理学研究科の住貴宏 准教授、京都産業大学理学部の米原厚憲 准教授を中心とするMOAグループならびに、μFUNグループ、OGLEグループ、WISEグループによる国際共同観測によるもの。詳細は7月3日付(米国東部時間)で、米国科学雑誌「Science」に掲載された。

2つの星が互いに重力で引き合い、その重心のまわりを互いに回り合う系である連星系で惑星が発見されることは、技術的に難しいこと、ならびに連星系中では惑星はあまり形成されないだろうという予測から、まれとされている。

また、重力マイクロレンズ現象は、アインシュタインの一般相対性理論が予言する「光が重力によって曲がる」と言う性質を応用したもので、ある星(背景光源)の前を偶然別の星(レンズ天体)が横切るとレンズ天体の重力によって背景光源からの光が、レンズを通ったかのように曲げられて集光し、突然明るくなった様に見えるというもので、百万個の星を見て1個しか起こらないという確率ながら、これまでに20数個の惑星を発見することに成功している。

今回の観測されたのは、2013年3月26日にチリのOGLEグループがイベントGLE-2013-BLG-0341として発見し、その少し後にMOAも独自にMOA-2013-BLG-260として発見したもので、調査の結果、主星から約1天文単位の距離を地球の約2倍の質量の惑星が回っている事が判明したという。また、この惑星は、主星が太陽の10分の1程度と軽く暗いため、-210℃と木星の衛星エウロパよりも少し冷たく、生命が存在する可能性は低いことも判明した。

さらに、WISEグループ、μFUNグループなどがさらなる調査を行った結果、主星は0.1~0.15倍太陽質量のM型赤色矮星で、これより若干重いM型赤色矮星と距離約15天文単位で連星系をなしている事が判明したという。

これまでのさまざまな研究から、連星の2つの星の外側を廻る周連星惑星や、連星系中の木星質量の惑星などが発見されているほか、地球型惑星も4個見つかっているが、今回ほど近い距離(20天文単位以下)の連星で、軌道半径が地球と同じ1天文単位と連星間の距離に対して比較的大きい地球型惑星が発見されたのは初めてだという。

研究グループでは、これまでこの様な惑星は伴星の影響で形成されにくいと考えられてきたが、今回、実際に発見されたことで、実はこうした惑星系が非常に一般的である可能性があるとの見方を示しているほか、もし、同惑星の主星が太陽程度の星であれば、液体の水が存在し、生命が存在する可能性がでてきたとしており、今回の発見が今後の地球のような生命が存在できる可能性がある惑星の探査の可能性を飛躍させることにつながると考えられるとしている。

今回発見された連星系中の惑星の想像図 (出所:名古屋大学Webサイト。提供:Cheongho Han、Chungbuk National University、Republic of Korea)

重力マイクロレンズ現象のイメージ(出所:名古屋大学Webサイト)