国立情報学研究所(NII)とロシア科学アカデミーは6月30日、可視可能な大きさの(巨視的)物体をテレポートさせる新たな方法を開発したと発表した。

同成果は、NII情報学プリンシパル研究系のTim Byrnes氏、ロシア科学アカデミー 化学物理学関連問題研究所のAlexey Pyrkov氏らによるもの。詳細は、英国物理学協会(Institute of Physics)と独物理学会(German Physical Society)のオンライン雑誌「New Journal of Physics」に掲載される予定。

テレポーテーションは、「エンタングルメント(もつれ)」と呼ばれる量子力学的現象に依存しており、大きな物体については、エンタングルメントはほぼできた瞬間に消えるため、テレポーテーションなどを実施することは不可能になってしまうと考えられている。

今回、研究グループは、1995年に実験的に再現されたボース・アインシュタイン凝縮体を利用することで、巨視的物体のテレポーテーション研究において、これまで報告されていた量子状態とは異なる新たな「もつれ状態」を発見することに成功。従来の量子状態の総自由度の一部ではなく、全体の状態がテレポートされていることを証明したとする。

今回の成果について研究グループは、巨視的物体のテレポーテーション研究に関する前進となるもので、テレポートできるものを従来よりも大きくできるが、人間のような物体に対しては量子状態が複雑であるため、同じ方法を適用することはまだ困難であるとの見方を示している。ただし、今後の研究により、今回の手法を活用して、より複雑な状態がテレポート可能になると期待できるとするほか、巨視的物体を使った量子プロセッサの開発にも使える可能性があり、量子コンピュータの実現を近づけるものにもなる可能性があるとしている。

巨視的物体をテレポートする手法。1つのBEC量子ビットでは千個以上の原子で結成されるボース・アインシュタイン凝縮体(BEC)を使用する。位相がφであるアリス(送る者)の量子状態を、ボブ(受ける者)に送ることが目的である。緑色のラインに応じてエンタングルメントがまず生成され、BEC量子ビット1と2が原子数測定される。その後、ボブは元々アリスが持っていた状態を保有

同手法によって使われる新たな「もつれた状態」の可視化。もつれる時間の関数としてのエンタングルメントの量を示している