宇宙航空研究開発機構(JAXA)はこのほど、5月24日に打ち上げた陸域観測技術衛星2号「だいち2号」(ALOS-2)の初期機能確認試験を実施しているなかで、同衛星に搭載されたLバンド合成開口レーダ(PALSAR-2)により観測画像を取得したと発表した。

PALSAR-2は、地殻変動や地球環境の監視に適したLバンドの周波数を用いた衛星搭載の合成開口レーダとしては世界唯一のもので、昼夜や天候によらず地表の画像を取得することが可能。

JAXAは、「だいち2号」が所定の性能を満足することを確認した後、8月中旬から観測データの校正検証を行う。一般利用者への提供は11月下旬を予定している。

図1は、2014年6月19日午前11時43分頃(日本時間)に、PALSAR-2の高分解能モード(約3m分解能)によって取得された観測画像とその観測範囲だ。

「だいち2号」搭載PALSAR-2による関東地方周辺の観測画像 資料:JAXA

図2は、図1の画像の浦安市付近を拡大したもの(右)を、2006年に打ち上げられた陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)で同年に観測された画像、と1992年に打ち上げられた地球資源衛星「ふよう1号」(JERS-1)で同年に観測された画像を、ともにLバンド合成開口レーダの各画像で比較したもの。「だいち2号」は、これまでの衛星と比較して高い分解能を有していることがわかる。

「だいち2号」搭載PALSAR-2とこれまでの衛星の観測画像の比較(浦安市 東京ディズニーリゾート周辺) 資料:JAXA

図3の左図は、図1の画像の伊豆大島周辺を拡大したもので、右図は、同じ画像を「だいち」搭載PRISMによって得られた標高データを用いて鳥瞰図表示したもの。右図では、2013年10月の台風26号の大雨による大規模な土砂崩れの跡が明確に見え(図中赤丸内の暗く見える場所)、まだ植生が回復していないと考えられるという。

「だいち2号」搭載PALSAR-2による伊豆大島の観測画像 資料:JAXA

図4の右図は、2014年6月20日22時54分頃(日本時間)に、PALSAR-2の高分解能モード(約3m分解能)によって取得された西之島周辺の画像。同年2月4日に航空機搭載Lバンド合成開口レーダ(Pi-SAR-L2)によって取得された左の画像と比べると、約4ヵ月半で島の面積が拡大していることがわかる(面積の増加分は、画像から約0.67km2と推定されている)。

「だいち2号」搭載PALSAR-2による西之島の観測画像(右)と航空機搭載合成開口レーダによる過去の画像(左)との比較 資料:JAXA

図5の(A)は、2014年6月20日22時56分頃(日本時間)に、PALSAR-2の高分解能モード(約3m分解能)によって取得された富士山周辺の画像。

この画像は、土地被覆の状況をより詳しく判別するため、観測から得られた偏波のデータを用いて疑似的にカラー化されており、おおまかに緑色が植生、明るい紫色や黄緑色が市街地、暗い紫は裸地を表す。

図5の(B)は、この画像の富士山頂付近を拡大したもので、(C)の「だいち」(ALOS)搭載のPALSARの画像と比べると、視認性が向上し、富士山頂につながる道路や火口の状況がわかる。

「だいち2号」搭載PALSAR-2による富士山周辺の観測画像 資料:JAXA

図6の(A)はブラジル国・ロライマ州東部の森林減少が2009年と比べて現在どのように変化したかをとらえたもの。この画像は、「だいち2号」のPALSAR-2が観測した2014年6月21日の画像(B)と2009年の「だいち」搭載PALSARによる画像(C)を用いて色合成している(水色が非森林、灰色が森林、赤色が5年間に減少した森林域を示す)。この画像の範囲で約25.0 km2の森林減少が見られることがわかるという。

「だいち2号」搭載PALSAR-2が捉えたアマゾンの森林減少 資料:JAXA