岡山大学は6月12日、微生物によって作られる酸化鉄がスマートフォンやノートパソコンで利用されているリチウムイオン2次電池の負極材として優れた特性を持つことと、同材料によるリチウムイオン2次電池がユニークな充放電機構を有することを発見したと発表した。

同成果は、同大大学院 自然科学研究科の高田潤特任教授、橋本英樹助教らによるもの。東京工業大学、京都大学と共同で行われた。詳細は、米国科学雑誌「ACS Applied Materials & Interfaces」に掲載された。

今回、自然界の地下水中で微生物が作るチューブ形状の酸化鉄が、現行のリチウムイオン2次電池の負極材料よりも約3倍も多くの電気容量を蓄えられることと同時に、充放電を繰り返しても高い電気容量が維持される良好なサイクル特性を見出したという。また、大電流で充放電しても高い電気容量を示し、高速充放電も期待できるとしている。

さらに、微生物由来材料によるリチウムイオン2次電池の充放電中の鉄、シリコン、リンの化学的変化を調べたところ、充放電過程中のナノ粒子とアモルファス相の変化により、充放電を繰り返しても優れた特性を示すことを見出したという。

微生物由来の材料は、従来の炭素材料や酸化物材料とは全く異なった特徴を有する低コストでエコな材料であり、未開拓材料に位置づけられる。微生物を活用すれば、化学的に作製する従来の酸化鉄とは異なるユニークな材料を作り出すことができる。得られる酸化鉄材料は未知だが、負極の構成材料である導電材や粘着材の選択や配合比率などで様々な工夫を加えれば、充放電性能の格段の向上が期待されるとコメントしている。

微生物(鉄酸化細菌)が作るチューブ状酸化鉄の電子顕微鏡写真

チューブ状酸化鉄中に微生物が1列に並んでいる電子顕微鏡写真(縦断面)