サイバー犯罪が企業や政府に及ぼす被害総額は4,000億ドル(約41兆円)、米国では約20万人分の雇用に相当する――このような内容を伝えるレポートが公開された。インターネット経済が経済全体に占める比率が大きくなっているなか、サイバー犯罪はその約20%を奪っているという。

この内容は、米国のシンクタンクである戦略国際問題研究所(CSII:Center for Strategic and International Studies)と米McAfeeが6月9日(米国時間)に発表した報告書「Net Losses – Estimating the Global Cost of Cybercrime」によるものだ。

この報告書では、DDoS攻撃やフィッシングなど、インターネットを利用して行われるサイバー犯罪がもたらす被害についてまとめている。インターネット経済がもたらす経済効果は年間約2兆ドルから3兆ドルに上る一方、サイバー犯罪はインターネットが創出する規模の約15から20%を奪うと算出されている。

2013年、米国では約3,000の企業がハッキングなどの被害を報告したという。また、米国では個人情報が本人の合意なしに漏洩した人が全体の15%にも達しているという。

こうした個人情報の漏洩は世界的に問題となっており、そのために費やすコストは1,600億ドルと報告されている。CSIIらによると、サイバー犯罪は「復旧コスト」とされるクリーンアップのためのコストが最も大きいとのこと。「犯罪者は窃盗したすべての情報を収益に変えることはできないが、被害者は大きな損害を被る」としている。

これらサイバー犯罪が与える最大の被害は、企業の業績と経済へのダメージだそうだ。全体として、サイバー犯罪は貿易や取引、競争優位性、イノベーション、グローバル経済の成長などに影響を及ぼすとしているが、なかでも大きいのが知的所有権(IP)への影響だ。IP創出とIP主導の産業を奨励している国々は、農業などの第一次産業ベースの国々と比較してサイバー犯罪で被る影響は大きいとしている。

GDPに占める被害額比率が高かったのはドイツ(1.6%)、オランダ(1.5%)などで、米国は0.64%、中国は0.63%となっている。ちなみに、日本は0.02%と低いレベルとなっている。被害額を過小評価する傾向なども関係あるとしている。

世界各国のGDPに占める被害額比率