Q.神社やお寺などの"社寺建築"はどんなふうに見えますか?

世界でも木造建築の数が比較的多い日本。特にお寺や神社は大半が木造建築であり、伝統的な工法で建築されています(都心ではRC建やビル内の寺院もあるようですが…)。そのため、建築や修復も一般の大工さんではなく、社寺建築を専門に扱う「宮大工」が行っています。そんな独特かつ日本ならではの建築は、きっと外国人のみなさんにとっても興味深い存在なのでは?

そこで、日本在住の外国人20名に「神社やお寺などの"社寺建築"はどんなふうに見えますか?」と聞いてみました。

■見た目では唯一の日本らしいスタイル(アジア)を表す建築ですね。また素晴らしい技術(地震対策)にそびえられた木造の建築なので、現代建築でも使えるいろんな知恵を秘めていると思います。(フランス/30代後半/男性)
■木造やかやぶきで地味な感じなのに数百年保持できる構造は不思議。また、鳥居が珍しい。(スリランカ/50代後半/男性)
■洗練されたアーキテクチャ。(スペイン/30代後半/男性)

構造に触れた回答です。フランスの方の回答にもあるように、寺院・神社の建築は一般的な木造住宅とも異なる「伝統構法」が中心。衝撃などに建物が変形しながら力を吸収して逃がす「柔構造」で、地震や風の強い力にも強いと言われています。鳥居は神社の建物ができる前からある「神域と俗界を区切る門(結界)」であり、神社の象徴でもあります。ちなみに、伊勢神宮正宮などに見られる「かやぶき」ですが、実は火を使わない神社では痛みやすいのだとか(伊勢神宮では20年ごとの「式年遷宮」でふきかえがあります)。ただ、枠組みには、伐採して300年ほど経つと強度が増すというひのきが使われることが多いため、寺社の「数百年」という強度もあながち大げさな話ではないんですよね。

■母国の社寺建築と類似点が多い。大きいというイメージはないが、尊厳さがある。(ベトナム/30代前半/女性)
■アジア系だなあ、と思った。(ブラジル/50代前半/女性)
■はるかに遠い極東を代表する建築ですね。(アメリカ/30代後半/男性)
■古い歴史があると感じます。(オーストラリア/40代前半/男性)

ベトナムの方の「母国と類似点がある」という回答は、中国仏教をお手本にした国ならではの印象でしょう。仏教建築では塔・本堂・仏堂の建築物がセットになっており、日本古来の寺院建築に用いられてきた和様、鎌倉時代初期の東大寺の再建の際に生まれた大仏様(天竺様)、禅宗寺院を始まりとし鎌倉時代後半に増えた禅宗様(唐様)などが存在します。現在も見られる仏教建築としては、「平等院」(和様)や「東大寺南大門」(大仏様)、「円覚寺舎利殿」(禅宗様)などがあります。

■細かい手作業が多い。(トルコ/20代後半/女性)
■独特で、非常に魅力的。(イタリア/30代後半/女性)
■カラフルで興味深いです。(イギリス/40代後半/男性)
■気に入っている人がとても多いです。私もそのようなデザインの家に住みたいぐらい。(スウェーデン/40代後半/女性)

細部やイメージに関する回答です。例えば、前述した仏教建築でいうと、大仏様は、柱に差した挿肘木(斗きょう)の下に皿斗を組み合わせた合理的な構造による豪快な造りが特徴。天井を張らず虹梁と束を積み重ねて屋根を支える構造のため、内側から見るとその美しさが際立って見えます。また、禅宗様では反り返った屋根の裾や火灯窓など、技巧的かつ装飾的で独特な意匠が多くなります。時代はもちろん、仏教なら宗派ごとにも細かな違いがあるのですから面白いですよね。

■平和。(シリア/30代前半/男性)
■平和的。(ペルー/40代後半/男性)
■見ると落ち着いた感じがします。(インドネシア/30代後半/男性)
■静かで落ち着ける。(ポーランド/20代後半/女性)
■優雅な感じ。(ドイツ/30代後半/男性)
■神秘かつ荘厳な場所。(中国/30代前半/女性)
■非常に神秘的で関心が深い。(ロシア/20代後半/女性)
■宇宙のすべてが入っている。(韓国/40代後半/男性)

寺院・神社に私たち日本人が感じているあらたかさは万国共通のようです。神秘的・宇宙という印象は、神話も含めた神社に対してでしょうか。例えば「古事記」で世界をつくったとされる「伊邪那岐」と「伊邪那美」に縁のある神社は国内に点在しますが、特に有名なのは「春日大社」(奈良)や「熱田神宮」(愛知)、「出雲大社」(島根)あたりです。ちなみに、こうした神社の参道にある玉砂利は、玉は魂(たましい)、砂利は細石(さざれ)の意、転じて「御霊の籠もった美しく大事な小さい石」という意味で敷き詰められているのだそうですよ。

■神秘的な感じがあまりせず、どちらかというと社会の中心という感じ。(インドネシア/30代前半/女性)

たくさんの寺院や神社が点在していたり、大きな神社であれば多くの人が初詣に詰めかける様子が毎年放送されていたりするので、社会の中心にあるように見えるのかも!? でも、それほどに生活になじんだ存在だと感じられているのだとしたら、それはきっといいことですよね。

建築そのものから周囲のしつらえまでさまざまな意味と役割を持った寺社建築。本来はひとくくりにできないくらい奥深く、私たち日本人にとっても興味深い存在です。普段は初詣しか行かないという人も、この機会に建築の細部や意味を考えてみては? 意外と今に通じる要素が見つかるかもしれませんよ。