地球の表面を板状に覆っているプレートはなぜ動くかという謎の一端を、海洋研究開発機構・地震津波海域観測研究開発センターの小平秀一(こだいら しゅういち)センター長らが解明した。地殻の下にある上部マントルの流動がプレートを動かしていることを発見したもので、3月31日付の英科学誌ネイチャージオサイエンスのオンライン版に発表した。地球科学で重要なプレートテクトニクスの本質に迫る手がかりとして注目される。
太平洋プレートは日本周辺で北西方向に年間8~10センチの速度で移動している。しかし、その原動力はよくわかっていない。研究グループは2009年と10年に、北海道南東沖100~700キロの太平洋プレートで、深海調査研究船「かいれい」から人工的な地震波を出して反射波を観測する方法で、大規模な海洋地殻・マントル構造調査をした。
その結果、海洋地殻の下部のプレート内に、北西側に20~25度傾斜したひび割れの構造不連続面が約2.5キロの間隔で規則的に分布していることを見つけた。この不連続面は地殻とマントルの境界のホモ面まで延びていた。プレート直下のマントルでは地震波伝搬速度の方位異方性が認められ、上部マントルがプレートより速く流動していたことがうかがえた。
マントルが地殻を引っ張る場合に予想されるせん断と不連続面は方向が一致していた。これらの観測から、太平洋プレートの下にある、高温で粘性の低い上部マントルが動いて、地表側のプレートを引きずった様子が浮かび上がった。研究グループは「太平洋プレートが約1億2千万年前に中央海嶺から生成したとき、下側にあるマントルの流動で力が加わって動きだした」と結論づけた。
小平秀一センター長は「プレートが動く原動力は大問題だが、これまでは両説があり、根拠が十分でなかった。今回は詳細の海底地下構造の調査で、下側のマントルの流動がプレートを動かした証拠をつかんだ。別の海域で確かめることも必要で、今年6月にハワイ北方で同様の調査を実施し、検証していきたい。地震や火山活動と関わるプレートテクトニクスの研究を発展させる発見だと思う」と話している。
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