三菱マテリアルは3月28日、アルミニウム(Al)回路上に銀(Ag)の焼成膜を直接形成した、次世代パワーモジュール用高性能絶縁回路基板「Ag焼成膜付きDBA(Direct Bonded Aluminum)基板」を開発したと発表した。

ハイブリッド(HV)車向けなどの高出力モータ電源制御用インバータでは、直流・交流電力の変換時に発生する発熱に対応し電力損失を低減させるため、SiCやGaNといった、200℃の高温環境下でも動作可能な高温半導体素子の利用拡大が見込まれている。しかし、このような高温環境下では従来の素子接合材であるはんだ材は使用できず、耐熱性に優れるAg系の接合材が一般的に使用されるが、その使用にあたってはAl表面にめっきなどの煩雑な下地処理の必要があり、めっき液使用による環境負荷の発生や製造コストの増加といった課題があった。

今回、高信頼性DBA基板のAl回路上に、十分な接合力を有するAg焼成膜の形成に成功した。同基板では、めっき下地処理が不要となり、ナノAgなどのAg系の接合材を用いて、Al回路上に素子を直接接合することが可能となる。今後、HV車向けなどの電源制御用インバータにおけるSiCなどの高温半導体素子搭載用の絶縁回路基板として、自動車や鉄道向けに拡大することを期待しているという。

Al/Ag接合部の断面観察。Agペースト中のガラス成分を最適化することにより、Ag焼成後にAlと強固に接合した焼成膜を形成した

Ag焼成膜付きDBA基板の外観。熱応力緩和効果の高いDBA基板のAl回路上に、Ag焼成膜を形成したもので、過酷な温度サイクル試験(-40~200℃×1000サイクル以上)においてもセラミックス割れを防げる

素子接合の構成例。この基板上に、ナノAgペーストや酸化Agペーストを用いて高温半導体素子を接合することで、高温動作可能なパワーモジュールの製造が可能となる