理化学研究所(理研)は3月14日、小保方晴子氏らの研究チームが英科学雑誌「Nature」に発表した2篇のSTAP細胞論文に不自然な画像や表記がある点について、調査結果の中間報告会を開催した。

理研 理事長の野依良治氏

報告会では、研究チームのユニットリーダー 小保方晴子氏が「研究結果を取り下げ、白紙に戻す」という意向を示したことを報告。論文を取り下げるには、研究チームのすべての著者の合意が必要で、最終的にネイチャーとの調整となる。現在、著者の一人である米ハーバード大学教授のチャールズ・バカンティ氏からの合意を得られていないが、同研究所の方針として「論文の撤回を勧める」としている。

当日、会場となった東京・八重洲の貸し会議室は、国内外から報道関係者300人以上、スチールカメラ30台以上の物々しい雰囲気の中で会見が行われた。冒頭、理研の理事長 野依良治氏は「理研の研究者が著者として発表したNature掲載論文が、科学社会の信頼性を揺るがしかねない」と述べ謝罪した。

調査委員会委員長の石井俊輔氏

調査委員会委員長の石井俊輔氏が、疑いのある点についての調査に関する中間報告の説明を行った。中間報告に用いられた調査は2014年2月20日~3月12日までの間に行われ、論文に掲載された実験のオリジナルデータ・ラボノート、論文作成過程を示すファイル、調査研究者らから提出された書面、調査対象らの間の電子メール、実験に使われた機器類に関するものを調査したほか、イメージ画像の復元に関しては専門家に依頼したという。

石井氏は、STAP論文の掲載画像で細胞部分に不自然なゆがみ・色が見つかった点について、小保方氏が「元の画像に不自然がなかった」と述べたと説明した。この画像は小保方氏がムービーを撮影して動画ファイルから切り出して画像にしたもので、「画像の解像度を下げるために圧縮をした際に、ブロックノイズが生じたのではないか」(石井氏)と考えを示した。

掲載氏の画像は、緑色の細胞に不自然な色(紫色の部分)がある

また、論文内の「Methodの核型解析」の記載の中に、研究チームとまったく関係のない論文からの盗用があるとの疑いに対しては、「(小保方氏が)引用の表記を忘れた」と説明した。小保方氏は論文を引用したことを覚えているが、典拠を覚えていなかったという。

赤い部分が別論文をコピーした部分

さらに、STAP論文の画像が小保方氏の早稲田大学の学位論文に掲載されものと酷似している点については、研究チームが同一の画像と判断した。学位論文では「3~4週のマウスB6骨髄細胞を細いピペットを通過させて得られた多性能細胞(スフェア)を用いて実験が行われた」と記載されており、別実験の画像を用いたことに対して石井氏は「論文としての体をなしていない」と述べた。

野依氏は、今回の問題について「今回の問題は理研の研究の中で、氷山の一角かもしれない。倫理・教育を徹底していく」と述べた。事実がわかり次第、小保方氏らへの何らかの処分を検討するとしている。