パナソニックは2月10日、マイクロ波を用いてパワーデバイスを制御する電力変換システムを開発し、半導体チップに集積化することに成功したと発表した。

詳細は、2月9日~13日に米国サンフランシスコで開催されている「国際固体回路会議(ISSCC) 2014」にて発表される。

モータで駆動する機器では、省エネのためにインバータを用いた電力変換システムが広く利用されている。しかし、この電力変換システムは大きな部品で構成されるため、設置場所が限られていた。今回、窒化ガリウム(GaN)を用いた新しい回路構成により、高電圧で動作する双方向型GaNパワーデバイスと、マイクロ波による非接触電力伝送を用いた絶縁ゲート駆動回路を、それぞれ半導体チップに集積化し、従来の電力変換システムに比べ1/100と超小型な電力変換システムを実現した。これにより、モータとの一体化を可能にした。また、システムの寿命を制限する電解コンデンサなどの部品が不要となるため、メンテナンスフリーを実現できるとしている。

具体的には、双方向型GaNパワーデバイスを用いたマトリクスコンバータ技術を開発した。効率良く、交流モータの回転速度やトルクを変えるには、交流電源の周波数や振幅を任意に変換(電力変換)する必要がある。従来は、交流を直流に変換し、さらに直流から交流に変換するインバータシステムを用いて、同システムを実現していた。しかし、多段の変換による大きな電力損失、大型の電解コンデンサによるシステム寿命の制限、DCリアクトルや力率改善回路によるシステムの大型化が課題だった。今回、交流から所望の交流に、直接電力変換できるマトリックスコンバータを採用することで、半導体デバイスのみの構成とし、電力損失の低減とともにシステムの簡易化を実現した。今回用いた双方向型GaNパワーデバイスは、デバイス自体の損失も少ないため、システムの電力損失を低減できる。

さらに、マイクロ波の非接触電力伝送で双方向型GaNパワーデバイスをオンオフするマイクロ波駆動技術「Drive-by-microwave」を開発した。一般に、非接触で電力を伝送する電磁界共鳴結合器は、共鳴周波数を高くするほど小さくできる。同技術では、5GHzのマイクロ波を用いることで、電磁界共鳴結合器のサイズを2mm角まで小型化した。この電磁界共鳴結合方式は、送信側共鳴器と受信側共鳴器で構成され、両共鳴器間の間隔を広くしても、低損失で非接触電力伝送ができるため、大きな絶縁耐圧が実現できる。また、マイクロ波駆動技術は、制御信号と制御電力をマイクロ波で絶縁して伝送することでパワーデバイスを絶縁駆動できる。同技術はこのように、マイクロ波エレクトロニクスとパワーエレクトロニクスを融合させた駆動方法となっている。加えて、今回1つの送信側共鳴器を挟むように、2つの受信側共鳴器を上下に設けることで、1つの信号を2系統の信号に分割して非接触電力伝送できる構造とした。これにより、パワーデバイスのゲート制御配線を半分に削減することができ、システムの大幅な簡易化、実装面積の縮小を実現した。この他、18個のゲート駆動回路(各絶縁電源)を、GaNを用いた高周波デバイスで構成される1つのチップとして実現したことで、制御信号電力を共有でき、駆動回路の電力を1/3程度にした。

そして、GaNパワーデバイスとマイクロ波駆動回路の集積化技術を採用した。これまでのシリコン系半導体のパワーデバイスは、半導体基板の表面から裏面に電流が流れる縦型構造のため、半導体基板の表面と裏面の間を分離できず、複数のパワーデバイスを絶縁分離することができなかった。一方、GaNパワーデバイスは、半導体基板の表面側のみを平面的に電流が流れる横型構造のため、パワーデバイスを横方向に絶縁分離でき、半導体基板表面側のみで配線することで集積化が可能となる。また、制御用ゲート端子を2本形成することで、従来4つのデバイスで構成されていた双方向スイッチを1つのデバイスで構成できる。これにより、3相マトリクスコンバータに必要な36個の半導体デバイスを、1つの半導体チップに集積化することができ、大幅な小型化を実現した。さらに、こうしたGaNパワーデバイスを駆動するマイクロ波駆動回路の一部をGaNパワーデバイスと集積化しているという。

試作モジュールの外観写真

開発した技術を用いた電力変換システムの試作モジュール。サイズは18mm×25mm