日本医療政策機構は1月16日、「慢性閉塞性肺疾患(COPD)における社会経済的負担に関する調査」の結果を発表した。
調査時期は2013年7月、調査方法はアンケート調査(アンテリオ株式会社のWeb調査パネル)、対象者は1354名(COPD患者パネル315名、一般パネル1039名)、解析対象は1272名(診断済みCOPD患者233名、潜在的COPD患者519名、COPD非罹患者520名)。
COPDは、慢性的にセキやタンが出たり呼吸困難になるといった肺や気管支の炎症性疾患の総称で、タバコの煙や大気汚染、粉塵などが発症の原因とされている。今後も患者が増加すると予測されており、世界保健機構(WHO)の推測は2030年の世界の死亡原因の第3位がCOPDになるだろうと発表している。
同機構では、COPD発症の程度によって生活の質(quality of life、QOL)や労働生産性・仕事以外の活動の状態、医療や介護の費用負担について調査を行ったところ、以下の点がわかったという。
QOL評価尺度であるEQ-5D(EuroQoL 5-dimension)を用い、調査で定めたCOPD非罹患者、潜在的COPD患者、COPD患者のQOLを測定したところ、それぞれについて段階的にQOLスコアが低下したという。
また、健常者とCOPD患者の総労働損失時間を比較すると、健常者が15.8時間であるのに対しCOPD患者は19.9時間と4.1時間長く、COPDによる超過労働損失は1人あたり年間で約47万円、患者の自己負担割合と1カ月あたりの自己負担額から割り返した医療費負担額は約6万円になるという。
さらに、COPD患者全体の費用負担は、医療費支出が1584億円、生産性損失が496億円(この金額には、潜在的なCOPD患者の生産性損失を含まない)。
同機構は、国内の呼吸器専門医、慢性呼吸器疾患看護分野認定看護師は、他の医学分野と比べても少ないと主張する。今後COPDの適切な治療やケアの提供体制を整備するためにも、この領域の医療専門職育成の推進が重要だとしている。