国土地理院は12月13日、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の月周回衛星「かぐや(SELENE)」の観測により得られた月のデータを元にした新たな月の地形図を作成したことを発表した。

今回の提供が開始された地形図は、かぐやに搭載されたレーザ高度計(LALT)を用いて取得された各観測地点の高さデータなどを活用したもので、アジア航測の千葉達朗氏に依頼し、同氏が開発した赤色立体地図の手法を用いて作成された「赤色立体地図」だ。

このほか、「平射図法(陰影なし/あり、濃い色、英語版)」、「メルカトル図法」、「ハンメル図法」、「正距円筒図法」が、(画像形式は同Webサイトにて表示する場合はGIF形式またはPNG形式、ダウンロードする場合はTIFF形式で、いずれも25dpi/50dpi/100dpi/200dpi/400dpi/800dpiのサイズ)提供されているほか、既存データとの比較地図や余色立体メガネをかけて見ることで立体的に見える「余色立体図」、A0判に合わせてレイアウトされたデジタルデータや月の回転動画なども提供されている。

なお、かぐやのLALTプロジェクトリーダーであった国立天文台の荒木博史博士は、今回の地図に対し、「月クレーターの重複や海の溶岩の積層の複雑さが手に取るようにわかります。地形の判読性は従来の図法より明らかに優れているようです。ここ数年で「かぐや」「LRO(NASAが打ち上げた月探査衛星)」などの月探査により、月全面にわたって水平分解能10m以下の地形データが得られました。こうした高分解能データを赤色立体図法で 表示すれば、新地形の探索や地形の上下関係の確認が体系的に進み、ひいては月地形の形成史に大きなインパクトを与えるかもしれません」とコメントしている。

神酒の海付近の画像。国土地理院のWebサイトにて月の全球を回転させてこれまで以上に詳細な月の様子を見ることができる (C)国土地理院/JAXA/国立天文台