エンバカデロ・テクノロジーズは12月9日、「C++Builder XE5」がWindows 32bit/64bit、OS Xにくわえ、iOSをサポートしたことを発表した。登録ユーザーは12月11日からアップデート版をダウンロード可能。C++Builder XE5 Enterprise以上、または、スイート製品「RAD Studio XE5 Professional」以上の購入ユーザーは無料でアップデートできる。
エンバカデロ・テクノロジーズ 製品担当ディレクターのジョン・トーマス氏 |
Windowsアプリ、OS XアプリをそのままiOSアプリに
C++Builder XE5は、C++を使ったWindows、OS Xのネイティブアプリ開発ツール。DelphiとC++に対応した開発ツールであるRAD Studio XE5に対し、C++Builder XE5は、C++に特化した製品となる。今回、iOSに対応したことで、Windows、OS X向けに開発したコードをそのまま使って、iOSのネイティブアプリを作成できるようになった。
エンバカデロ・テクノロジーズの製品担当ディレクター、ジョン・トーマス(John Thomas)氏によると「CPUで直接実行されるネイティブコードなので、パフォーマンスが良く、高いセキュリティとユーザーエクスペリエンスを持ったアプリケーションが開発できる。iOSのデバイスAPIやセンサ、サービスなどにも対応する」とアピールした。
トーマス氏は、調査会社Dimensional Researchによる調査結果を示しながら、「85%のWindows開発者が、モバイルアプリの開発にはネイティブ環境が最適」だと回答しているものの、「74%がHTML5やJavaScriptを使ってモバイルアプリケーションをデリバリーすることに困難さを感じている」と指摘した。
「HTML5やJavaScriptでの開発で課題になるのは、デバイスの機能にアクセスしにくいこと(44%)やプログラミング言語の機能が不十分なこと(38%)、パフォーマンスが低いこと(31%)などだ。単一のソースコードで、複数のデバイスに対応できるようにすることで、こうした課題にこたえる」(トーマス氏)
マルチプラットフォーム対応「FireMonkey」、近々Androidへも対応
シングルコードで複数のデバイスに対応するうえでは、「FireMonkey」と呼ばれるマルチプラットフォーム対応のコンポーネントフレームワークを利用する。ターゲットとなるデバイスのOSや解像度、タッチインタフェースの有無などを判断して、必要なライブラリを選び、適切なUIを持った実行バイナリを生成できる。フォームのデザインでは、iPhone、iPod touch、iPadなど、画面サイズの異なるデバイスのUIをドラッグ&ドロップで作成することが可能。
そのほか、企業システムとモバイルアプリを接続するための「DataSnap」やさまざまなデータソースと接続するための「FireDAC」などの技術を使って、モバイルアプリケーションを既存のデータベースやミドルウェアと連携することも簡単にできるという。
「Android対応版も近々発表できる。将来的には、ウェアラブルPCや車載コンピュータ、産業用機器などにも対応していく予定だ」(トーマス氏)
エンバカデロ・テクノロジーズ 日本法人代表の藤井等氏 |
日本は世界有数のC/C++大国、スマホアプリ開発はスキル不足が深刻
日本国内でのビジネスの状況や需要については、日本法人代表の藤井等氏が説明を加えた。ビジネスとしては、2011年にFireMonkeyを搭載しWindowsとMacのクロス開発が可能になったことで、RAD Studioが54%の成長を示した。また、今年4月にDelphiがiOSに対応したことで、RAD製品売上が前年比2倍になり、さらに、Androidに対応したことで、2013年第3四半期はRAD製品が前四半期比1.5倍に成長したという。
「昨年は『HTML5でことたりている』という声が多かったが、今年に入ってから状況が変わった。『複数のデバイス対応はHTML5では難しい。ネイティブ開発を検討している』という声が増えた」(藤井氏)
藤井氏によると、モバイル開発の現場では、かつては「スキルの高いエンジニアが職人芸で対応していた」が、需要が増えたことでエンジニアの数やスキルの不足が目立つようになった。結果として、複数デバイスに対応することやパフォーマンスの要求に応えることが難しくなってきており、C++に対する期待が高まってきたという。
また、企業システム開発の現場でも、Windowsベースのアプリケーション開発を持続しつつ、それに加えてモバイルアプリに対応するというシーンが増えた。開発生産性やメンテナンス性、既存アプリケーション資産の活用などといった点を考慮して、C++に注目が集まっているという。
「実は、日本は世界有数のC/C++大国だ。組み込みなどではCの利用が多く、Windows開発などでもCやC++が利用されるケースが多い。そうした既存のコードを有効活用できる点は大きい」(藤井氏)
C++Builder XE5は、Starter、Professional、Enterprise、Ultimate、Architectのエディションがある。価格は、Professionalの新規購入の場合で11万円。