1997年に劇場公開されたスタジオジブリのアニメーション作品『もののけ姫』のBlu-ray発売記念スペシャルイベントが2日、東京・新橋のスペースFS汐留ホールで開催され、スタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーと西村義明プロデューサー、さらにサプライズゲストとしてアイドルグループSKE48の松井玲奈、松井珠理奈が出席した。

左からSKE48松井玲奈、鈴木敏夫プロデューサー、SKE48松井珠理奈、西村義明プロデューサー

宮崎駿監督が手がけた『もののけ姫』は、森に住む神獣たちと製鉄を生業とする人間たちの対立を背景に、犬神に育てられた少女・サンと勇敢な人間の若者・アシタカの出会いを描いている。制作に3年をかけた大作であり、興行収入は193億円を記録。公開当時の邦画の興収記録を塗り替え、米良美一の歌う主題歌「もののけ姫」なども大きな話題となった。この大作が12月4日にBlu-ray版として発売される。

今回のイベントでは、スタジオジブリ作品の2人の"姫"に着目。『もののけ姫』をはじめとする数々のジブリ作品のプロデュースを担当したスタジオジブリの名物プロデューサー・鈴木敏夫氏と、現在上映中の高畑勲監督『かぐや姫の物語』を担当する若手プロデューサー・西村義明氏から、両作品を中心にさまざまなエピソードを明かされた。

公開初日に13万人、二週目ではそれを上回る16万人と動員数が好調に推移している『かぐや姫の物語』だが、鈴木プロデューサーは宮崎駿監督の負けず嫌いな一面が伺い知れるエピソードを披露。「宮さんは最初、0号や初号上映は遠くでやるから、自分はあとで会社で見るって言ってたんです。でも初号の上映が近づくとそわそわして、用事ができたから初号に行くと言い始めた」と完成当初を振り返り、「『かぐや姫の物語』はスタッフの感動度が群を抜いていて、初号の上映で泣いているスタッフもいた。すると宮さんは『この映画で泣くのは素人だよ!』と言い出してね。今でも意味がわからなくて(笑)。玄人だとどうなるのかな(笑) その後は『かぐや姫の物語』については一言も言及せずに、某模型雑誌のために黙々と漫画を描いている」と、宮崎監督の近況を報告した。

さらに『火垂るの墓』を未完成で公開しなければならなかった断腸の思いや『もののけ姫』のラストについても明かされ、特に『もののけ姫』の最初の絵コンテは、今のラストとは結末が違っており、烏帽子御前の腕がもげ、タタラ場が炎上するシーンがなかったという。しかし、鈴木プロデューサーはそのままではあっさりしすぎるとは感じていたが、これ以上尺を伸ばすと予定のスケジュールに間に合わないことから「物語としては烏帽子御前を殺すべきじゃないか」と宮崎監督に助言。すると宮崎監督は「そう思ってたんだ鈴木さん!」と電車の中で叫び、スタジオのテレコムの人が総出で手伝ってもらう形でようやく本作は完成を迎えたという。

なお、西村プロデューサーは、高畑監督が描くヒロイン像について「高畑監督は観客がこうあって欲しいと思うヒロインではなく実際はこうだという、現実的な映画を作ろうとする。映画の中と現実を切り結ぼうとする。男性女性以前に、1人の人間として敬意を払っている」と話し、鈴木プロデューサーは宮崎監督を「宮さんは男は強いもので、女を守らなければという、エスコートヒーロー的な面がある」と分析している。

トークショーの後半には"ふたりの姫"にちなんで、SKE48の松井玲奈、松井珠理奈が登場し、プロデューサー陣に花束を贈呈。最初は「SKE48? 知らない。AKB48とは違うの?」とつれない発言の鈴木プロデューサーだったが、松井玲奈がアニメ好きならではの「小さい赤ん坊だったかぐや姫が、鳥が笑うと大きくなり、虫が鳴くとまた大きくなる。わらべうたの歌詞と内容がリンクしてるのに気がついて、想いが込められているシーンだなと思いました」といった洞察の深い発言や質問を連発すると、「君は……すごいな!」と目を丸くした一幕も。

『もののけ姫』が上映された年に生まれた松井珠理奈は「喜怒哀楽の感情が全て出て、6回は泣きました」と『かぐや姫の物語』への想いを語ったが、「もし自分だったらと想像したら悲しくて……」という発言に鈴木プロデューサーから「自分中心の子なの?」とつっこみが入り、さらに松井玲奈よりも声が大きいことから「君は気が強そう。表情に出てる」「(松井玲奈に)きみは声の出し方からして優しそう。2人は好対照だね」とダブル松井の印象を語っていた。