NECは、スマートフォンなどのモバイル端末のみで、3G/LTEや無線LANアクセスポイントを使わずに、多数の端末が集中した環境でも高速な情報配信ネットワークを構築する技術を世界で初めて開発したと発表した。
この技術により、通信インフラが途絶した状況や、通信端末が集中する過密環境でも、高速性を保ったまま、データ量の大きい写真や動画なども配信・共有することができるという。また、従来の無線通信とは異なり、数万人が一斉に密集するスタジアムや混雑するターミナル駅などでも高速な情報共有が可能になるという。
同社は今回開発した技術は、データ欠落の発生しない、DTNマルチキャスト配信技術を世界で初めて実現。送信側は従来と同じく一斉配信を行うだけで、配信途中のデータ欠落を多数の受信端末同士で補完しあうことにより、モバイル端末を持った人が一斉に集まり、パケットロスが頻発する過密環境でも、安定した大規模情報配信を実現する。
また、多数のモバイル端末が密集して通信を行う場合、著しい通信速度の低下が発生するが、これを回避する技術を世界で初めて開発した。これは、各端末に搭載したアプリケーションが、電波が届く範囲にある多数の端末の送信タイミングを自律分散的に数10ミリ秒から数100ミリ秒単位で制御。複数の端末からの同時送信を回避し、パケットの衝突を抑制することで、過密環境でも通信速度を低下させず、データ量の大きい写真や動画も高速に配信・共有が可能となる。
さらに、ネットワーク全体の状況を把握し、情報の優先度に応じて各モバイル端末の送信タイミングを決定する技術を東北大と共同で開発。警報や応援要請など緊急性が高い情報を優先的に発信し、低遅延で広範囲に拡散することが可能になる。
NECはこの技術を、地方自治体における災害情報配信・共有システムや、防災無線をはじめとした社会インフラネットワークに広く適用していくという。