日本レジストリサービス(JPRS)は11月27日、Internet Corporation for Assigned Names and Numbers(ICANN)と共同で、2012年に募集が開始され、審査を経てルートに追加され始めた新gTLDに関して、企業が保有するブランドや商標をどう守るかについての共同セミナーを開催した。
TLDは、「.com」や「.jp」などドメインにおいて最後の「.(ドット)」以降の部分。「.com」や「.net」など用途や分野別に設けられたgTLD(ジェネリックトップレベルドメイン)と、「.jp」や「.us」など国や地域に割り当てられたccTLD(国別コードトップレベルドメイ)があり、「.jp」についてはJPRSが管理運営を行っている。
gTLDは2012年に第三次の拡張を開始し、1930件の申請が行われた。現在は、その審査がほぼ終わった段階にあり、「.camera」「.technology」「.sexy」や、「.みんな」(レジストリは海外の企業)といった新たなgTLDがルートに追加され始めている。
セミナーでは、JPRS 技術企画室 室長補佐の遠藤 淳氏が新gTLDの最新動向について述べた。まず、遠藤氏はこれまでに拡張されてきたgTLDを紹介。
その上で、2012年の第三次募集が「申請条件を満たせば新設数に制限がない」「企業名やブランド名での新設も可能」「企業内での独占利用も可能」といった特徴を持つと説明。実際に「.apple」「.bbc」「.gmail」など企業名やサービス名の申請が数多く行われている。
1930件の申請のうち、884件が米国でトップ。次いで、法人登記が比較的容易に行えるケイマン諸島が91件となっており、日本は71件(内2件は取り下げ)で申請数では5位となっている。
日本からの申請一覧は、下スライドの通り。企業名やサービス名が並ぶ中、「.moe」といったgTLDの申請も行われている。ちなみに「.moe」のレジストリはインターリンク。すでに、ICANNとの契約も完了しており、近い将来「◯◯◯.moe」といったドメインのURLを目にすることになるかもしれない。
遠藤氏によると、11月22日の時点でこの1930件の申請のうち、1772件が審査を通過しているという。その他は、申請取り下げが128件、不承認が4件など。すでにICANNとの契約を締結しているgTLDも増えてきており、2014年以降、これらのgTLDについても登録申請が開始される見込みとなっている。
これらセカンドレベルドメインの登録申請(「◯◯◯.moe」の例であれば、◯◯◯の部分)について同氏は、「企業が保有するブランドや商標と同列文字列の第三者申請」「ブランドや商標と同列文字列や類似文字列の第三者による不正利用」に留意すべきだとする。
新gTLDにおいては、商標保護システムとしてTradeMark ClearingHouse(TMCH)を、デロイトとIBMが協同で提供する。これは、商標を保有する企業が事前に登録しておくことで、新gTLDの申請受け付け開始にあたって、30日間の優先申請期間(サンライズピリオド)と、他社(他者)による申請の文字列監視を提供する有料サービスとなっている。
また遠藤氏は、ドメイン名の紛争処理に関しても、従前からあるUDRPによる登録取り消しに加えて、Webサイトの閲覧停止などの措置をUDRPよりも迅速に行えるURSといった仕組みが新たに導入される(ただし、登録の取り消しや変更までは行われない)ことを紹介し、「これらの対応で商標を守っていく」と説明した。
TMCHは、ICANNのもとで構築された商標データベース。すべての新gTLDは、要件に従って、このTMCHに接続する必要がある。これらの仕組みをICANNが設計。デロイトとIBMがサービスプロバイダーとして今年の3月にサービスを開始し、現在では17000件を超える商標が登録されているという。
TMCHでは、商標保有者が自らその商標の登録を申請する必要がある。審査を通過しTMCHに登録されると、署名付きのデータファイル(SMD)が発行され、優先申請期間における新gTLDへの先行登録が行える仕組みとなっている。
また、優先申請期間が終了して一般登録が開始された際にも、90日間の文字列監視が行われる。これはすでに登録されている商標と同じ文字列のドメイン名を第三者が申請するとその第三者へ警告を行い、またそのドメイン名が登録された場合には商標保有者へ通知を行うようになっており、このような仕組みを利用することで企業にとっては商標トラブルの発生を低減することができる。
同セミナーには、ICANNからアジア太平洋地区のバイスプレジデントであるKuek Yu-Chuang氏も登壇。新gTLDがもたらすビジネスインパクトとして、「市場に新たなプレーヤが参入することでの投資」「(マーケティングキャンペーンなどにおいてこれまでドメインの)選択肢が少なかったものが、◯◯◯.shopなど選択肢が増え、競争原理が働く」「新しいイノベーションやビジネスモデルの創出」「オンラインでのブランド強化」などを挙げた。