11月23日に公開が予定されているスタジオジブリ最新作で、高畑勲監督が手がけたアニメーション映画『かぐや姫の物語』の完成披露会見が7日、都内で開催され、高畑監督と脚本の坂口理子氏をはじめ、主要キャスト陣が登壇した。

左から二階堂和美、朝丘雪路、宇崎竜童、宮本信子、高畑勲監督、朝倉あき、高良健吾、田畑智子、上川隆也、坂口理子

本作は、日本最古の物語文学『竹取物語』をベースに、製作期間8年、総製作費50億円を投じて製作されたスタジオジブリ最新作。筆と水彩で描いたようなタッチで濃密に描きこむことで生まれた独特の世界と空気感が見どころで、これまでのアニメにはなかった作画としても話題となっている。キャッチコピーは"姫の犯した罪と罰"。

会見には、高畑監督と脚本の坂口氏、日本テレビ代表取締役社長の大久保好男氏、主題歌を担当した二階堂和美、キャストから朝倉あき、高良健吾、宮本信子、田畑智子、宇崎竜童、上川隆也、朝丘雪路が出席した。

難産の作品をついに完成させた高畑監督は、「今回ほど仲間に感謝したことはない。日本のアニメーションを一歩先に進められたんじゃないかと思います。出来上がった作品に満足していると言えるのは自分には珍しいです」と、会心の一作に仕上がったことを明かした。脚本の坂口氏は、3カ月の間、高畑監督と二人三脚で脚本制作にあたったようで「話し合いが少し詰まると、監督がお散歩しましょうか、食事に行きましょうかって言ってくださるんです。いろいろな知識が詰まっている高畑監督との作業は本当に楽しくて、終わってしまったときは寂しかったです」と感慨深げ。主題歌を担当した二階堂は"ハッピーエンドではない物語なので、見た人を慰めるような歌を"と高畑に発注され「実際にエンディングで流れているのを見て、よし! と思いました」と、確かな手応えを感じているようだった。

キャスト陣のトークでは、走る演技に不慣れだった高良がスタジオを飛び出して走ってきた話、宇崎がプレスコ(先に声を収録してその後に画を作っていく手法)で絵がない中でイメージを広げるため、アフレコ時に高畑監督の顔を、自分が戦う龍に見立てて演じた話などさまざまエピソードが明かされた。高校時代に自主アニメを制作していた経験がある上川は「その時の仲間の一人、串田達也が背景としてこの作品に参加しているんです。人と人とのつながりを感じる思い出深い作品になりました」と話して報道陣を驚かせ、朝丘は「小さい頃から父が大好きで、父の布団に潜り込んでいた時のような、あったかい作品に出られて幸せでした」と満足気な表情を浮かべていた。

本作は、竹取の翁役・地井武男氏の遺作となった作品でもある。一緒に収録に臨んだ朝倉は、「一緒にお芝居ができて、なんて幸せ者だったんだろうと思います。地井さんは収録の時にこにこしてリラックスされていて、収録が煮詰まってくると体操を始めたり、休憩でおにぎりを頬張ったり。とても自然体な様子に私もなんだか落ち着けたので、今思えば気を使っていてくださったのかもしれません」と思いを巡らせた。

竹取の媼を演じた宮本も「地井さんとは何度も共演して夫婦役もやって現場で会うとお互い変わらないねと肩を叩き合う同級生のような関係でした。地井さんも出来上がった作品を、月から見守ってるんじゃないでしょうか」と話していた。

また、作品を完成させた高畑監督は今後については「考えていない」としながらも、変わらずアニメ製作を続ける意欲を見せている。先日引退を発表した盟友・宮崎監督については「彼は今もスタジオジブリのメンバーなので、何も変わりません」としながらも、「今度は本気ですと言っていたが、変わる可能性はあると思う。彼とは長い付き合いですから、別に復帰したりしても驚きませんよ」と話し、会場の笑いを誘っていた。

映画は『かぐや姫の物語』は11月23日より全国公開。