大阪府は30日、マグニチュード(M)9.1規模の南海トラフ地震が発生した場合の被害想定を発表した。それによると、大阪府内の死者は最大13万3,891人となり、内閣府が想定した9,800人の13倍以上に上った。しかし、地震発生後すぐに全員が避難を始めれば死者は8,806人まで減らすことができるという。
被害想定は、同日開催された府の「南海トラフ巨大地震災害対策等検討部会」(部会長:河田恵昭関西大教授)で提示された。冬の午後6時と夏の正午の2ケースを想定し、それぞれ地震発生5~10分以内に全員が避難を始める場合と30%が津波到達まで避難しない場合を検討した。人的被害については、地震発生後2時間弱で津波が到達し、津波の浸水深が1メートル以上の地域では100%死亡すると仮定した。
被害が最大となる冬の午後6時に地震が発生した場合は、津波による死者は13万2,967人(うち、堤防の沈下などによる死者は1万8,976人)、建物の倒壊による死者は735人、火災による死者は176人などとなり、合わせて13万3,891人が死亡すると予測。津波による死者が内閣府の想定を大幅に上回った要因は、防潮堤の沈下などにより、浸水面積が国の約3.6倍に広がったことによる。
ただし、地震発生後5分~10分以内に全員が避難を始めれば、津波による死者はゼロ、堤防の沈下などによる死者は7,882人まで減少するとしている。
津波による死者数を地域別に見ると、最も多かったのは大阪市西区の2万245人。次いで、同西淀川区の1万9,725人、同北区の1万6,198人、同淀川区の1万3,548人、同港区の9,865人、同此花区の9,272人、同福島区の8,591人となった。
津波被害に伴う要救助者数は、夏の正午に地震が発生した場合が最も多く、府全体では106万5,761人に上った。地域別では、JR梅田駅などがある大阪市北区が16万2,373人で最多。以下、同西区が13万7,133人、同淀川区が12万4,395人、同住之江区が8万6,175人、同港区が7万7,208人と続いた。
地震で全壊する建物は最大17万9,153棟と予想し、内閣府の34万4,300棟から約半数に減少した。被害要因を見ると、液状化によるものが7万1,091棟、火災が6万1,473棟、津波が3万1,135棟、揺れが1万5,375棟、急傾斜地崩壊が79棟となった。
同部会専門委員の矢守克也京都大学防災研究所教授は、「高知県や和歌山県の海岸沿いなど、一刻を争う地域と大阪の状況とは異なる。むしろ、60分程度の余裕時間があることを見込んで、何ができるか(しかし、何は絶対してはいけないか)について、想定を受けとった側が考えることができるようなガイドラインとなるデータが望ましいのではないか」と述べている。