登利平で不動の人気を誇る「上州御用鳥めし竹弁当」

岡山県のとりめし、愛知県の高浜とりめし、大分県の吉野鶏めしなど、とりめしは郷土料理として全国で愛されている。群馬県にもとりめしは多々存在するが、県内で絶大な人気を誇り、販売数も恐らく断トツなのが、登利平(とりへい)の「上州御用鳥めし竹弁当」(680円・税込み)である。今回はその人気の秘密に迫りたい。

伝統の「鳥重」をもっと手頃に

登利平とは、群馬県前橋市に本社を置く昭和28年(1953)創業の食品会社。秘伝のたれと厳選された鶏肉で、創業当初から人気を博しているのが「鳥重」なのだが、それを気軽にテイクアウトできるようにしたのが「上州御用鳥めし」である。なかでも、「上州御用鳥めし竹弁当」は発売以来大人気の状態が続いており、県内のとりめしでは右に出るものはないとか。

郷土料理の一品として、鶏料理は古来より存在しているが、その専門店が街中に姿を現したのは大正末期とされている。登利平の創業者は東京下町・北千住に生まれ、その後昭和の初め、前橋に鶏肉販売店を開業。そして昭和28年、のれん分けにより先代が“新生登利平”を開店したのである。

その頃からメニューにあった「鳥重」は、味の良いことで顧客に喜ばれたという。当時のたれは、たれ壺の中で半世紀以上にわたり脈々と生き続け、登利平の味として受け継がれている。

本社に隣接し県道高崎駒形線沿いにある好立地の南部店

人気の秘密はたれと鶏肉の厚さに!?

それではいよいよ、登利平の「上州御用鳥めし竹弁当」の秘密に迫ってみよう。薄くスライスした鶏肉と国産米を使用し、自慢のたれを満遍なくまぶしている。ひとたび口に入れれば肉の柔らかさと、まろやかでコクのあるたれが調和し、心地よい香りも漂ってくる。

まず、鶏肉の厚さであるが、測ってみると約1~数ミリメートル。これに甘辛のたれと国産米が交わり、絶妙な味を創出する。鶏肉がこれ以上厚くなると、鶏自体の味が出しゃばる。逆に薄くなると、その味が押さえ込まれてしまう気がする。この約1~数ミリメートルがベストなのだろう。

良質の鶏肉の厚さ、甘辛のたれ、国産米が絶妙な味を創出する「上州御用鳥めし竹弁当」

1時間8,000食、1日5万食の製造が可能

先代が考案した「鳥重」を、何とか量産できないものかと試行錯誤を繰り返し、2年間準備を要した後、現在の「上州御用鳥めし」が完成。昭和47年(1972)には弁当の分野で群馬県優良物産品に推奨さるなど、「上州御用鳥めし」は自他共に認める「上州の味」に成長した。

平成3年に完成した本部受注配送センター(セントラルキッチン)

平成3年(1991)3月に完成した本部受注配送センター(セントラルキッチン)は、安定した味を安心して提供できるよう、徹底した衛生管理を行い、1時間に8,000食、1日に5万食の製造が可能な生産設備になっている。現在、群馬県内29店舗、埼玉県内3店舗にて営業中で、今後開店する直営店はもとより、持ち帰り弁当専門の販売店の展開等に前向きに取り組んでいくという。

ここで1時間8,000食、1日5万食が作られている

中曽根康弘総理(当時)から感謝状

ここで登利平の歴史的なエピソードをひとつ。

悲しい出来事であるが、昭和60年(1985)8月12日、東京(羽田)発 大阪(伊丹)行 日本航空定期123便ボーイング747SR-46(ジャンボジェット)が、群馬県多野郡上野村の高天原山の尾根(御巣鷹の尾根)に墜落した。いわゆる日本航空123便墜落事故だ。

このとき、自衛隊、群馬県警察、埼玉県警察、長野県警察などによって救助活動が行われたが、政府は、多数の救助関係者に食糧を供給する必要に迫られた。要請を受けた登利平は、政府の要望に柔軟に対応することができ、時の内閣総理大臣、中曽根康弘氏より感謝状が授与されたという。

登利平本社に展示されている各種弁当のパッケージ

もっとお手頃な特別メニューも 

また、登利平には隠れたメニューも存在する。運動会などのイベントでは「上州御用鳥めし竹弁当」が活躍するが、680円の価格は大量に注文する弁当としてはやや高い。そこで登利平では、内容は「上州御用鳥めし竹弁当」と変わらず、包装を簡易にして価格を下げた特別メニューを設けている。ただこちら、10個以上を条件としており、値段については本部受注配送センターに要相談とのこと。前橋、高崎、伊勢崎あたりでは、「上州御用鳥めし竹弁当」は運動会等での定番弁当となっている。

登利平には、弁当に加え、御重、定食を合わせて40以上のメニューがあり、その他一品料理、宴会料理など、鶏肉を中心とした各種メニューのバリエーションも豊富だ。

一例として、食事処では「上州御用鳥めし竹弁当」ではなく、「上州御用鳥めし竹重」(780円・税込み)となる。竹弁当の鶏肉の部分が一部そぼろ風の鶏卵に代わっており、上品さがアップしている。惣菜の部分も、季節によって代えているようだ。

さらに、何となく飲兵衛用に考案されたと思われなくもない「鳥串弁当」(850円・税込み)もある。ご飯の上に載っているのは何と焼き鳥。恐らく飲兵衛さんは「鳥串弁当」を肴(さかな)にしながら、味噌汁の代わりに日本酒などを引っ掛けているのであろう。

食事処で提供される改良型の「上州御用鳥めし竹重」

「鳥串弁当」は飲兵衛用に開発されたのか

今年もまた、秋の運動会や行楽のシーズンがやってきた。群馬県では再び、登利平の「上州御用鳥めし竹弁当」を始め、各社各種の弁当類が大活躍することであろう。是非全国の“とりめしファン”には、一度ならず何度も、登利平のとりめしに魅了されていただきたい。