岡山大学は9月3日、病原菌表面由来物質「エリシター」がカルシウム依存性タンパク質キナーゼ「CPK6」を介して植物の葉にある気孔の閉口運動を誘導する分子機構を解明したと発表した。

同成果は、同大大学院環境生命科学研究科の村田芳行教授(生物情報化学研究室)と資源植物科学研究所の森泉助教(環境応答機構研究グループ)らによるもの。詳細は、米国の植物科学雑誌「Plant Physiology」に掲載された。

陸生高等植物の葉の表皮に存在する「気孔」は、1組の孔辺細胞から形成されており、光合成に使用する二酸化炭素の取り込みや蒸散による水分排出を調節する重要な器官としてしられているが、同時に多くの植物病原菌の侵入経路にもなっている。

そのため、そうした病原菌の侵入を阻害するために、孔辺細胞には病原菌表面物質(エリシター)を認識し、気孔を閉じる機能が備わっており、エリシター誘導気孔閉口を強めることで、病原菌の侵入を気孔で止めることができると考えられいる。しかし、エリシターの種類は多く、それぞれのエリシターが誘導する気孔閉口の機構をすべて研究することは困難であるほか、植物は複数の病原菌に感染される場合が多いため、一種類のエリシター誘導気孔閉口の強化だけではその感染の阻害に十分ではないという課題があった。

近年、さまざまなエリシターは孔辺細胞内のカルシウム濃度の上昇変化を介して、気孔閉口を誘導することが報告されるようになり、その増加したカルシウムを感受する孔辺細胞内の因子の探索に注目が集まるようになってきた。そこで今回、研究グループでは、モデル植物であるシロイヌナズナを用いて、逆遺伝学、生化学および生物物理学の手法を用いて、普遍なエリシターである酵母由来エリシター誘導気孔閉口の分子機構の解明に挑んだという。

その結果、カルシウム依存性タンパク質キナーゼの1つであるCPK6がエリシター誘導カルシウムの濃度の上昇を感受し、気孔閉口を制御することが確認されたという。

なお、この成果を受けて、研究グループでは、CPK6をコードする遺伝子に注目して作物の品種改良を進めれば、幅広い病原菌抵抗性の作物の開発が可能となり、現在我々が直面している食糧問題の解決につながるものと期待されるとコメントしている。