京都大学(京大) 松田秀一 医学研究科教授らの研究グループは、選択的レーザー溶融(SLM)法を用いた脊椎用カスタムメード型インプラントを開発し、京大医の倫理委員会の承認を得て、医学部附属病院において臨床試験を開始したことを発表した。

骨関節疾患の治療にはさまざまな金属製インプラントが用いられているが、いずれもモジュール化された既製品のため、患者によっては疾病部位への適合性に問題があり、インプラント形状に合わせて生体側の骨を削るなどの手術操作が必要となっていたほか、腫瘍切除などにより生じた大きな骨欠損に対する修復は困難であり、患者は美容的にも機能的にも障害を受けることがあるといった課題もあった。

研究グループは今回、3Dプリンタ技術の1つである選択的レーザー溶融法(SLM)を生体親和性が高いチタン金属に適用する技術を開発。これにより、100μm単位の微細構造の造形が可能となり、外形精度の向上とインプラント内部の格子状構造の採用により、周囲の骨から新生骨が侵入しやすくなったほか、人工股関節において臨床応用されている表面の化学処理と組み合わせることで、チタン金属を生体骨と埋植早期に強固に結合させること、手術侵襲の低減、手術の正確性・安全性の向上などの利点を得ることが可能となり、早期の社会復帰の実現も期待できるようになるという。

すでに、京都大学医の倫理委員会の承認を得た医学部附属病院における臨床試験として、同大の藤林講師、竹本特定助教らにより4名の患者に手術治療が行われており、いずれも経過は良好だという。

左は術前のMRI写真。膨隆した椎間板により脊髄が圧迫されているのが分かる(矢印)。右は術後のレントゲン写真。手術により切除した椎間板にぴったり適合したカスタムメードインプラントが挿入されている(矢印)

また、同技術は、九州大学病院の住田知樹 講師(前任は愛媛大学医学部)による歯槽骨欠損に対する歯槽骨造成術(GBR)および顎骨腫瘍切除後の顎骨再建術にも応用されているとのことで、同技術の活用により、術前に設計した形の骨を造成することができるようになり、その結果、従来法に比べ、手術時間の短縮や、手技の容易化が可能なほか、顎骨再建術としては美容的にも機能的にも従来行われていた再建手術に比べて高い患者の満足度を得ることにもつながることが確認されたとしている。

歯槽骨造成術(GBR)および顎骨腫瘍切除後の顎骨再建術に応用する際の各種イメージ。1は下顎歯肉癌術後の骨の状態。食事が困難。2は歯科インプラントを植えるためのトレイを作製。3が術後の3次元予想図。4は歯科インプラント支持の義歯が入り摂食可能となった様子。そして5がカスタムメードチタンメッシュ

なお、研究グループでは、今回の研究では頸椎と顎骨で臨床試験を行ったが、カスタムメード型医療機器としてさまざまな骨関節疾患の治療に応用できる可能性があるとしており、今後は適応疾患を拡大し、欧米製品が95%以上を占める脊椎手術用医療機器業界における国内企業の活性化につなげたいとしている。