金沢大学は8月5日、北海道浦幌町の古第三紀の2つの時代(約6,000万年前と約3,000万年前)の地層から、珍しい巻貝の新種2種を発見したと発表した。

同成果は同大理工研究域自然システム学系ロバート・ジェンキンズ 助教と上越教育大学天野和孝 副学長らによるもの。詳細は2013年1月に横浜国立大学で、また2013 年6月に熊本大学で開催された日本古生物学会で発表されたほか、論文として日本古生物学会英文誌「Paleontological Research」に掲載される予定だという。

今回の巻貝の1つであるウラホロハイカブリニナ(学名:プロバンナ・ウラホロエンシス)は、約3000万年前の縫別層を2009年に実施された発掘調査にて数個体が採集され、その後、2012年度に本格調査を実施し、38個体を採集。調査の結果、新種と確認したという。

ウラホロハイカブリニナ(学名:プロバンナ・ウラホロエンシス)

また、もう1種のウラホロモミジソデボラ(学名:カンギリオプテラ・イノウエイ)は、2012年度に実施された本格調査にて約6000万年前の活平層上部から148個体を採集し、新種と確認されたという。

ウラホロモミジソデボラ(学名:カンギリオプテラ・イノウエイ)

ウラホロハイカブリニナは、ハイカブリニナ類に属する巻貝。現在のハイカブリニナ類は、メタンハイドレートなどに伴うメタン湧水周辺でバクテリアを食べていることが知られており、新潟県の上越沖メタンハイドレート周辺にも生息していることが知られているほか、上越市柿崎区黒岩でも約1160万年前の化石が発見されていることから、このウラホロハイカブリニナも現在のハイカブリニナ類同様、メタン湧水周辺でバクテリアを食べていたと考えられるという。

今回の発見は、新生代古第三紀(約6600万年前から約2300万年前)のハイカブリニナ類の化石としては日本で初めてで、古第三紀の地層からのハイカブリニナ類の化石発見は世界でも2例目であり、研究グループでは、これまで報告されていた後期白亜紀の約8300万年前以前か新生代新第三紀の約1600万年前以降の化石記録をつなぐ発見になると説明している。

一方のウラホロモミジソデボラはモミジソデボラの仲間で、大西洋と地中海の浅海から深海に生息している生きた化石として知られている。ジュラ紀(約2億100万年前から1億4500万年前)から白亜紀(約1億4500万年前から約6600万年前)に栄え、恐竜の絶滅した白亜紀末の大量絶滅により76%の属が絶滅したとされており、日本ではこれまの研究から、白亜紀(約1億4500万年前から約6600万年前)から18種が報告されていたが、その後の新生代(約6600万年前以降)からの報告がなかった。

今回の発見について研究グループは、恐竜などが絶滅した後でも日本周辺でこの仲間が生き延びていた証拠となるほか、これまでの研究では約6000万年前はグリーンランドと太平洋側とが海でつながっていなかったと考えられてきたが、今回の発見から、むしろグリーンランドと太平洋を行き来できる海があった証拠となる可能性があるとコメントしている。