強巴林(チャンバリン)の釈迦牟尼仏像も、チベットのジョカン寺の本尊を再現

人口300万人都市の名古屋市は16区から構成されているが、その中でチベットを感じられるエリアと言えば守山区だ。奥まった方は山奥に近く、名古屋市最高峰の東谷山(193m)も守山区にあるからというが、その守山区には正真正銘のチベット寺院もあるのだ。

チベット修行後、正式に認められて設立

早速取材しようと訪れたのは、2005年に創建されたチベット仏教寺院「強巴林(チャンバリン)」。隣接する倶利加羅不動寺の森下永敏住職が実際にチベットで修行し、正式に認められて日本での建立が実現したという。寺は森下住職の修行地だったチベット最古の寺院、「ジョカン寺」がモデルとなっている。

強巴林に一歩足を踏み入れると、そこは極菜色のチベット仏教の世界だ

お馴染みクルクルと回すとお経を読んだことになる「マニ車」

本尊の釈迦牟尼仏像もジョカン寺のそれを忠実に再現しているという。建物からインテリアからどれを取っても、日本の仏教寺院とは全く違った極彩色の世界。一歩踏み入れると、とにかく圧倒される。長い階段をのぼると、チベット仏教につきもののマニ車を発見! 中に経典が入っていており、これをくるくるっと回すとお経を読んだことにしてくれるのだ。

余生を仏教に捧げた案内人がレクチャー

ここで登場してきたのが、「チャンバリンの案内人」こと広報職の浅井覺道さん。「中に入る前にまずお線香をたいて身を清めてください。そして四方にいる仏様に挨拶をしてくださいね。線香は3本あってそれぞれ……(以下略)」と、一つひとつ丁寧に作法をレクチャーしてくれる。

この広報・浅井さん、聞くとかなり異色の経歴の持ち主だ。大手デパートのデザイナーを長年勤めたというクリエイター出身なのである。デザイナーとして会社勤めの傍ら、プライベートではなんと山伏の修行に励んでいたというのだ。そして定年と同時に、残りの人生は仏教に身を捧げようとチャンバリンの案内人に就いたのだという。

異色のキャリアを持つ、広報の浅井覺道さん

「1階と2階をざっとご案内するだけでも、3倍速で話して1時間はかかります。質問に答えようものなら2時間コース。この前なんか3時間かかった人もいました」とこの時点でトークが止まらない。

「お釈迦様のことチベットのこと、仏教のこと。話したいことはいろいろあるんですよ! そもそも仏教とは……(以下略)」輝くまなざしで語り続ける浅井さん。「でもカタイことを言ってはいかん!  まずはたくさんの人に来ていただかないと」とのこと。実際、本家ジョカン寺のご本尊のご利益をインスパイアしてつけた寺院のキャッチフレーズは、「縁結び(えんむすび)のお釈迦様」なのだ。

チベット風すいとんをバター茶とともに

このチャンバリンが今、力を入れているのが「グルメ」だ。敷地内には、チベット料理と寺カフェの「パルコル」がある。ここではチベット直伝のカレー(750円~)やチベット茶(400円)といった、現地でしか味わえない本格的なチベット食のメニューはもちろん、フルーツパンケーキ(1,000円)など和製カフェメニューも充実している。

敷地内にあるチベット料理と寺カフェの「パルコル」

せっかくだから珍しいものをと、筆者がチョイスしたのはチベット風すいとんの「トゥクパ」(580円)だ。シソとコリアンダーとカルダモンの香りが強烈で、野菜がたっぷり。味自体はさっぱりしている。これは女性客が多いのもうなずける! 続いてオーダーしたのは伝統の「バター茶」(500円)。ヤクの乳で作ったバター入りで、現地では1日40杯ほども飲まれるという。

チベット風すいとんの「トゥクパ」(580円)

浅井さんは不定期で休みをとっているとのことだが、案内してもらうのに予約は必要ないため、時間にゆとりがある人は浅井さんにレクチャーしてもらおう。異国情緒あふれる寺の内外に圧倒されるとともに、きっと新しい世界が開かれるはず。

●Information
強巴林(チャンバリン)
名古屋市守山区青葉台101