北海道大学(北大)は、医薬品や香料の原料として有用な「光学活性アルデヒド類(構造が右手型または左手型のアルデヒドと呼ばれる種類の分子)」を簡便・安価・クリーンに合成する方法を開発したことを発表した。
同成果は、同大大学院工学研究院・フロンティア化学 教育研究センターの新井則義氏、佐藤敬介氏、東慶太氏、大熊毅 センター長らと高砂香料工業などの研究グループによるもの。詳細は化学分野の学術雑誌「Angewandte Chemie International Edition」に掲載された。
人間には似て非なる右手と左手があるが、分子も同様に右手型と左手型が存在し、それぞれの機能が異なっていることが知られており、それらの有効な機能を持つ片方だけを活用(光学活性分子)することで、有用な医薬品や香料を作ろうという動きが世界各地で活発化している。 今回、研究グループは、医薬品や香料の原料として有用な「光学活性アルデヒド」を、入手容易なアリルアルコールの結合の組替え(異性化反応)により合成することを目指し、少量用いるだけで反応が進行する高い活性と、ほぼ完璧に左右を作り分ける機能を併せ持つ触媒の設計と性能試験を行った。
さまざまな構造を持つ触媒を設計し、それらの性能試験を行ったところ、Ru錯体と水酸化カリウム(KOH)を組み合わせた触媒が、高い性能を示すことを確認したという。
実際に、入手容易なアリルアルコールに少量(100分の1~2000分の1)の「右手型選択触媒」を加えることで、右手型の光学活性アルデヒドが99%以上の純度で得られることが確認されたほか、左手型の光学活性アルデヒドは1%未満の割合でしか確認されないことも判明。また、左右を入れ替えても同様の成果を得られたことから、どちらの光学活性アルデヒドもほぼ純粋に合成できる反応であることが示されたほか、アリルアルコールの結合を組替えるだけの反応なので無駄を生じさせずに済むということも判明した。
なお、この反応は少量の触媒を用いるだけ済むため、簡便・安価・クリーンな方法であると言えると研究グループでは説明しており、今後は、高砂香料工業との産学共同研究により実用化を目指した取り組みを進めていきたいとしている。