「満腹」の元祖「円盤餃子」、一皿30個で1,500円

一言で言うと「豪快」である。大ぶりな皿に丸く円盤状に並んだ大量の餃子、その数20数個~30個。その名も福島「円盤餃子」。お酒やビールのお供に、この大皿に並んだ餃子をひとりでぺろりが福島流。女子ですらこれを完食するんだとか……。

フライパンいっぱいに円盤状に焼き上げる

福島名物の円盤餃子は、この「満腹」から

あまり知られてはいないが、福島県福島市は“餃子の町”である。市内には数多くの餃子専門店があり、市民に親しまれている。

福島市にはかつて満州(中国東北部)から引き揚げてきた人が多くおり、戦後、そうした人たちが満州で作り方を覚えた餃子の専門店を開いたのが“餃子の町”の始まりとされている。そうした餃子専門店の多くで提供されているのが、この福島名物「円盤餃子」である。

餃子一皿と言えば普通は6~9個くらいだが、「円盤餃子」は店によって異なるが、その数どーんと20数個~30個という大迫力ぶりである。

餃子は何を使って焼きますか?----そう、フライパン。ではフライパンの形は?----丸い円盤状。つまり、フライパンで一度に最大数の餃子を焼き上げるとすれば、餃子を円盤状に並べるのが最も合理的であり、フライパンいっぱいに焼き上げて、そのまま大皿に移して、はい、お待ちどうさま----これが福島名物「円盤餃子」なのである。

「うちは創業者の先々代が満州鉄道に勤めておりまして、戦後、満州(現在の中国東北部)で覚えた餃子の作り方で餃子店を開店したんです。その頃も作り方は今と同じなんですが、円盤餃子とは言っていませんでした。円盤餃子という名称は、15年くらい前でしょうか。あるタウン誌がうちの餃子を紹介するに当たって、その形状が空飛ぶ円盤に似ていることから名付けられたものなんです」(「満腹」椎野幸嗣さん)。

以来、円盤状に餃子を焼きあげるスタイルが「円盤餃子」の名のもとに市内の多くの店に広まり、今では10店舗ほどで円盤餃子が提供されるに至っている。

市内各所に置かれている「ふくしま餃子の会」マップ。これがあれば好みの円盤餃子の店を探せる

ご飯はなし。ビールに円盤餃子が福島の定番

飯坂温泉にある「餃子の照井」。店の前にある足湯も利用できる

この円盤餃子、食べ方も全国標準とはひと味違う。普通、餃子と言えば中華料理店やラーメン店のメニューのひとつであり、ご飯やラーメンと一緒に食べるもの。しかし、福島の円盤餃子の店は大概が夕方開店の餃子専門店であり、お酒を飲みながら餃子を食べるというのがスタイルなのだ。つまり、お酒のお供なのである。

「昔は日本酒の方が多かったですが、今は生ビールに餃子というお客さんが多いですね。ご飯はありません」(椎野さん)。

「満腹」の他、「山女(やまめ)」「川鳥」(いずれも「満腹」の親戚筋に当たる)といった円盤餃子の有名専門店も開店は夕刻。夜の帳(とばり)が降りようとする黄昏(たそがれ)時になると、店の前には「餃子で一杯」で仕事の疲れを癒やそうとする人たちが行列する光景が見られる。

福島市の奥座敷と言われる飯坂温泉の「餃子の照井」も人気の店。温泉地の立地を生かして店の前に足湯も備えられており、温泉客も多く訪れている。

「餃子の照井」の円盤餃子は27個1,350円

ちなみに同じ円盤餃子でも、味は店々によって工夫が凝らされており、個性はいろいろである。あっさり系、にんにくたっぷり系、よもぎを練り込んだ皮の餃子、ひき肉にえごま豚を使った餃子、などなど。詳しくは「ふくしま餃子の会」を参照いただきたい。好みの店を見つけて、是非円盤餃子一皿完食に挑戦してみよう。