国立天文台は6月27日、アルマ望遠鏡向けに日本が開発したバンド4受信機が2013年1月に実施された試験観測にて、天体電波画像の撮影に成功したことを発表した。
今回の観測対象となったのは、へびつかい座の方向約400光年の位置にある原始星(赤ちゃん星)「IRAS16293-2422」。生まれたばかりの原始星の周囲には、星が生まれるもととなった大量のガスが取り巻いていることが分かっており、今回の試験観測では、日本が開発した直径7mアンテナ6台を用いて、そのガスに含まれる硫化水素分子(CS)が放射する周波数147GHzの電波の観測が行われた(CSは、ガスの密度が高いところで強く電波を出すため、生まれたばかりの星のすぐ近くにあってこれから星に取り込まれていくガスの様子を観測するのに適しているという)。
また、バンド4受信機で観測できる周波数帯は、今回の硫化水素分子(CS)が放射する周波数147GHzのほか低温の星形成領域に多く分布するホルムアルデヒド(H2CO)や重水素化合物、複数の炭素原子が一直線につながった炭素鎖分子が電波を出すことが知られているという。
硫化炭素分子が放つ電波で観測した、原始星IRAS16293-2422を取り巻くガスの様子。電波のドップラー効果を測ることで、この原始星の周囲を分子雲がどのような速度で動いているかを調べることができる (c)ALMA(ESO/NAOJ/NRAO) |
なお、今回の成果について、国立天文台先端技術センターでバンド4受信機開発チームリーダーを務める鵜澤佳徳 准教授は、「バンド4受信機で天体の電波画像を撮影することに成功したことをうれしく思う。開発には数多くの技術的課題があったが、チーム一丸となって課題をクリアすることでここまでたどり着くことができた。世界の天文学者がこの受信機を使って宇宙の謎を解いてくれることを期待している」とコメントしている。