確かに、このところ中国からアメリカへのサイバー攻撃は目に余るものがあるようだ。2013年2月下旬にアメリカのコンピュータセキュリティ企業が公表したところによれば、2006年以降、中国は上海からハッカーグループ「AT1」が世界中の企業や機関に対して不正アクセスを繰り返しているという。ハッキングが成功してデータを盗み出されたケースは、実に141件。そのうち115件がアメリカの企業や機関だったという。

 そして同社は、そのAT1の正体が中国人民解放軍の「61398部隊」であることを突き止めた。61398部隊とは、コンピュータに長けた隊員が集められたエリート部隊。まさに“サイバー攻撃部隊”ともいえる集団だ。もちろん中国政府は全力で否定しているが、アメリカでは、機密漏洩や電力網のようなインフラを乗っ取られかねない事態に、中国政府に対して強行な対応を求める声が上がっていた。

 そんなサイバー攻撃の激化に対して、オバマ大統領は、送電網や航空管制システムといった基幹インフラを運営する企業を中心に、セキュリティを強化するべし、という大統領令を発表した。民間と政府とで協力して対策を講じよ、とも指示している。まあもちろん大統領の施策に反対する陣営もいるのだが、とにかくそのぐらいアメリカ政府は戦々恐々としているわけだ。

 そしてアメリカ国防総省がさらに強硬な姿勢を発表した。「Resilient Military Systems and the Advanced Cyber Threat」なる報告書で米国防総省が主張するには「中国のハッキングが激化するようなら、我々は核兵器によってサイバー攻撃を抑止する」と明示されているというのだ。おいおい。

 アメリカの核兵器の使用は、これまで「“極限状況”でのみ検討すべき」とされていた。敵対組織が核攻撃するときにはやむを得ず核兵器によって対応するかもね、ということだった。極限状況とは「米国に対してレベルV~VIの破壊的サイバー攻撃が行われた時」だそうで、そのレベルV~VIの破壊的なサイバー攻撃を行える“国家”とは、アメリカ、ロシア、そして中国と定義されている。

 つまりは今後、中国から大規模なサイバー攻撃があったら核ミサイル撃っちゃうかもよ、という宣言に等しいのだ。執拗なサイバー攻撃によって“極限状況”のハードルが下がってしまった形だ。

 旧ソ連との冷戦時のように、核兵器 vs 核兵器の場合は確かに“抑止力”だった核兵器だが、対サイバー攻撃となると…。その“抑止力”が妥当かどうかはさすがにちょっと疑わしいな。

  • 上司X: アメリカがサイバー戦争に核兵器を持ち出しちゃった、という話。

  • ブラックピット: 陸・海・空・宇宙、そしてサイバー空間が戦争の舞台となる現代なんですから、このような形になるのも頷けるじゃないですか?戦場が渾然一体とした感じで。

  • 上司X: だって核兵器だぞ。剣呑すぎやしないか?

  • ブラックピット: 冷戦の頃だってアメリカと旧ソ連は「さあ撃つぞ、いまボタン押すぞ」的な姿勢だったのに、結局ナニゴトもなく今まで来たじゃないですか。抑止力ってそんなものです。

  • 上司X: だからそれは“抑止力”としてパワーバランスが保たれていたからだろう? 相手はサイバー攻撃だぜ。下手したら相手がズブの素人ってことだってある。

  • ブラックピット: 逆に考えてみてくださいよ。もはや相手が素人じゃなくって、核攻撃に匹敵するような、もはや国家が転覆しちゃいそうなサイバー攻撃を仕掛けてくる集団なんですから。ある程度抑止しておかないと。

  • 上司X: ……う。そう言われればそうだな。本気の威嚇も仕方ないということか。

  • ブラックピット: でもそれが効くかどうかは向こうさん次第でしょうけど。それにアメリカも中東方面にサイバー攻撃を加えてる、的なウワサもありますからね。某国からはリアルに核兵器で狙われてるかも?といった報道もありますし。問題は山積みですな(汗)。

  • 上司X: なんでそんな呑気なんだよ? まあアメリカはなあ、攻守にわたってリアルでもサイバーでも軍事力を発揮できるからいいけど……。日本がサイバー攻撃を受けたら、さて国家レベルではどうするのかな。わりと笑い事では済まされない気がするぞ。

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登場人物紹介

金曜Black★ピット!気になるその登場人物をちょっとだけご紹介します♪

NAME:ブラックピット(本名非公開) / AGE:36(独身) / 所属:某企業SE(今年で6年目) / その他:昔レーサーに憧れ、夢見ていたが断念した経歴を持つ。(中学生の時にゲームセンターのレーシングゲームで全国1位を取り、なんとなく自分ならイケる気がしてしまった。)愛車は黒のスカイライン。憧れはGTR。車とF1観戦が趣味。笑いはもっぱらシュールなネタが好き。

NAME:上司X(本名なぜか非公開) / AGE:46 / 所属:某企業システム部長(かなりのITベテラン) / その他:中学生の時に秋葉原のBit-INN(ビットイン)で見たTK-80に魅せられITの世界に入る。以来ITひと筋。もともと車が趣味だったが、ブラックピットの影響で、つい最近F1にはまる。愛車はGTR(でも中古らしい。)人懐っこい×面倒見が良い性格。

この記事はキーマンズネットで連載された過去記事を転載しています。