米マイクロソフトは、大地震などの緊急災害時における自治体の業務や情報発信を、ICT・クラウドを通じて支援する「災害時に関する協定」を、世界で初めて岡山県と締結。その内容を具体化するため、岡山県は5月21日、日本マイクロソフトと「災害時に関する協定書に関する合意書」を締結した。

5月21日、日本マイクロソフト本社で行われた合意書の締結式

締結後の日本マイクロソフト 代表執行役 社長 樋口泰行氏(左)と、岡山県知事 伊原木隆太氏(右)

この協定は、災害発生時の情報発信等の機能低下に備えて相互に協力し、安定した業務の継続を図るもの。この協定に基づき日本マイクロソフトは、岡山県域において地震や津波などの大規模災害が発生したとき、または災害が発生するおそれが生じたとき、クラウド技術を活用した支援をすみやかに提供する。

具体的な支援内容は、災害時のコミュニケーション支援、情報発信の継続、クラウドを活用した職員安否確認の3つで、これらは岡山県に無償で提供される。

災害時のコミュニケーション支援では、災害発生時、情報共有基盤のOffice 365を使用可能とし、岡山県庁や関係機関に対して電子メール、掲示板・ポータル、ウェブ会議などの機能を提供する。メールアドレスは、普段利用しているものをリダイレクトする形で利用できるという。

情報発信の継続では、災害時に岡山県ならびに関係機関の情報発信手段としてのウェブサイトを補完するため、クラウド基盤の Windows Azureを活用したミラーサイトなどの設置展開を日本マイクロソフトが支援する。

そして、職員安否確認では、各種スマートフォン、PC、タブレットなどで日常的に使用できる緊急連絡サービス(Coco-do:日本デジタルオフィス協力)を提供・利用可能にする。

支援を行うシステム規模や対象職員については、今後、両者で協議しながら決定するという。

締結に際し、岡山県知事 伊原木隆太氏は「東日本大震災の際、情報インフラが切れていないことが重要であることがわかった。岡山県は、これまで1000年以上大きな地震もなく、災害が少ない県ではあるが、今回の協定の締結でいざというときに助けになり、県民の安心、安全が図られる。思っていたことと異なることが起きてしまうのが災害だが、岡山県は災害も少なくノウハウも少ないので、この部分でもマイクロソフトさんに協力していただきたい」と述べた。

一方、日本マイクロソフト 代表執行役 社長 樋口泰行氏は「マイクロソフトは、これまで被災地支援を得意分野であるITを利用して行ってきた。今回の支援は、これまでの経験を活かし、これから起こりえる災害に向けて対応したものだ。岡山県には、これまでも地域活性化プログラムを通じて支援を行ってきたが、今回の協定はこれを一歩進めたものだ。東日本大震災では、クラウドが災害に有効なことが証明された。東日本大震災では、どこにいってもみなさんが表計算ソフトを使って情報を整理していた。この情報をクラウドにあげれば、情報の一元化と共有ができる。これは災害が起こってから整備したのでは遅い。災害の少ない岡山県で今回のような取り組みを行うことのメッセージ性は非常に大きい。ぜひ成功に結びつけて、横展開を図っていきたい」と語った。

合意書の締結後、伊原木知事は、実際にOffice 365を体験。樋口社長が自らLync(インスタントメッセージ、ビデオ電話、オンライン会議などの機能を提供)の使い方を説明するシーンも見られた

Lyncで、岡山市の地図に書き込みを行う伊原木知事