母親が「座って抱っこ(Holding)」から「抱っこして歩く(Carrying)」の前後における、赤ちゃんの行動と心拍の変化

理化学研究所は、ほ乳類の子供が親に運ばれる際にリラックスする「輸送反応」の仕組みの一端を、ヒトとマウスを用いて科学的に証明した。

赤ちゃんの泣く量が約10分の1に

同研究は、ほ乳類の子供の反応「輸送反応」に関する研究。輸送反応とは、ヒトを始めライオンやリスなどのほ乳類の母親が子供を口にくわえて運ぶと、子供はおとなしくなり、丸くなって運ばれやすい姿勢を取る反応のことだが、これまでその意義や反応を示す時の神経メカニズムは不明だった。

共同研究グループは、母親が生後6カ月以内の赤ちゃんを腕に抱いた状態で「座る・立って歩く」という動作を繰り返した。その結果、母親が歩いている時は、座っている時に比べ赤ちゃんの泣く量が約10分の1に、自発的な動きが約5分の1に、心拍数が歩き始めて約3秒で顕著に低下することを発見。赤ちゃんがリラックスすることを科学的に証明した。

次に、母マウスが子マウスを運ぶ動作をまねて、離乳前の子マウスの首の後ろの皮膚をつまみあげたところ、ヒトの場合と同様に泣きやみ、リラックスして自発的な動きと心拍数が低下し、体を丸める様子が見られた。

また、身体を丸めて運ばれやすい姿勢をとるには運動や姿勢の制御をつかさどる小脳皮質が必要なこと、おとなしくなる反応には首の後ろの皮膚の触覚と、身体が持ち上げられ運ばれているという感覚の両方が重要であることも明らかになった。更に子マウスの「輸送反応」を阻害したところ、母親が子マウスを運ぶ時間が増加することも分かったという。

同研究結果により、ほ乳類の赤ちゃんはおとなしくなる「輸送反応」により、自分を運んでくれる親の子育てに協力していることが明らかとなった。研究成果は、米国の科学雑誌『Current Biology』(5月6日号)に掲載されるが、それに先駆け、オンライン版(4月18日付け:日本時間4月19日)に掲載されている。

同研究については、Youtubeでも動画で公開している。

※同研究は、理研脳科学総合研究センター黒田親和性社会行動研究ユニットのジャンルカ エスポジート(Gianluca Esposito)国際特別研究員と、吉田さちね研究員、黒田公美ユニットリーダーらと、精神疾患動態研究チーム、トレント大学、麻布大学、埼玉県立小児医療センター、国立精神・神経医療センター、順天堂大学による共同研究